深海(うみのそこ)のマンドーラ




「ん……」


太陽がすごく眩しい……


「……あ……あかね……」
「ママ――?」


ママはあたしを強く抱き締めた。


ママは泣いていた──
あたしがマンドーラに行ってから1ヵ月がたってたなんてビックリしたけど、ママが待っていてくれた事がスゴく嬉しかった。

ママは、あたしを突き落としたことを後悔してたんだって。


それで、パパとも別れた。



あたしが帰ってきて一週間がたった。

今日は久しぶりにママとお出かけ。
一ヶ月遅れの誕生日をお祝いしてくれるんだって。
「プレゼントは何がいい?」って聞かれたから、あたしは新しい家族が欲しいって言った。
新しい家族は──


「魚?」
「うん」


あたしは頷いた。


「猫じゃなくて?……犬でも、鳥でもなくて?」
「魚がいい」
「じゃあ、飼おっか!」
「うん!」


水そうと小さい丸太の形をした家。
餌も買った。もちろん水草も。

それから──


「ママ、これも……」

少し、えんりょがちに言ったあたしにママは笑って“いいよ”って言ってくれた。

久しぶりに見たママの笑顔に少し泣いた。



あたしは最後に手に取った、さくらんぼの形をしたガラスも水そうに入れた。


「これで、おしまいっと」


さくらんぼの形をしたガラスはゆっくり沈んでいく。

あたしは、じっと眺めていた。


「ねえ、あかね。名前はどうしよっか?」
「この子は、“マグロ君”だよ」


そう言って魚を見ると、どこかマグロ君に似てる気がした。

マグロ君って思えば思うほど似てる!


「……また会えたね、マグロ君」


あたしがマグロ君に話しかけると、水そうの中のマグロ君が勢いよく跳ねる。

あたしには、“オイラ達は友達マグ”ってマグロ君が言ってるように思えた。





──おしまい──
10/10ページ
スキ