Freedom within the Walls
「そんな顔をして、どうした?」
私の頭を撫で、コルクが言った。
「……え?」
「泣きそうな顔してた」
「…………友達のこと、思い出しちゃって…………って、コルク?! いつの間に……」
帰ってくるなり、慌ててどっか行っちゃったじゃない。
「1時間程、この部屋で仕事をしていた」
「…………まさか、寝顔……」
「心地良さそうで、何よりだった。それで安心して仕事に臨めた」
──こんな時になんで、思い出したんだろう……
センセイは眠る私にキスをしようとした……
服に手を掛けてきたことも──
メルトが来てくれなかったら……
「……どうした?」
「ううん……何でもない」
そう言った私の頭を彼は静かに撫でてくれた。
「林檎飴は食べてみたか?」
「…………あ」
林檎飴の存在を忘れていた。
鞄の中を覗くと、袋の中で飴が溶けているのが見えた。
「寄越せ。俺のと替える」
コルクの林檎飴は買った時のままだった。
「直ぐに食べないなら冷蔵庫、いい忘れた俺の責任だ」
大きな口を開け、林檎飴にかじりつくコルクに思わず笑ってしまう。
「何を笑う? この食べ方が一番、美味いというのに」
「ふふ、その口」
「口?」
彼自身は気付いていなかったみたいだけど、口の周りに着色料で出来た唇があった。
「うわぁ!……俺、いつもこんな顔で食ってたのか……なんで誰も教えないんだよ……」
「可愛いからだと、思います」
「可愛い!? 俺が!?……林檎飴、卒業しないとか」
その言葉に再び笑ってしまう。
「まあ……誰かが笑顔になるなら悪くはない、か」
「え?」
その時、急に部屋の外が騒がしくなった。
「どうした? 何があった?」
「それが──」
コルクについて行くと、そこには──
「…………ノア?」
to be Continued...
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