Moon and Apple Candy




──気が付くと、見知らぬ天井が目に入った。


「おはよう、クレア」


声に身体を起こす。


「ノア……?…………センセイ……は?」


あの後……何があったんだっけ……
センセイに襲われそうになって……
それから……思い出せない……
私──


「心配いらない。クレアは汚れていない」
「……え?」
「それから、ヤツは処刑した」
「……処刑って……」
「生徒に手を出そうとしてた奴だからな。下衆な奴を排除したまでだ。それより、試験が始まる」
「……試験……?」
「数日遅れだが、クレア……お前のだ」
「私……?」
「受かって、オレと来いよ」


私は静かに首を横に降った。


「…………何故?」
「……オペラが言ってた。上は……地獄しか……ないって……」


ノアは私の言葉をただ、聞いている。


「…………ユノが死んだって……」


ノアの顔色が変わった。


「オペラに……会ったのか…………あいつ、元気にだったか?」


視線を逸らしたまま、ノアは言った。
……触れてはいけない“何か”を遠ざけるかのように。

そういえば、オペラは……ノアが行方不明だって……どういうこと──?


「……何か、知ってるの?」
「…………知らねぇな」
「お願い……何か知ってるなら──」
「ユノを殺ったのは……オレだよ」
「え──」
「オレはアイツが好きだった! なのに、アイツは……ユノは──ッ!」
「どうして……? ユノは……っ」


“私、ノアが好きなの。ずっと、ずっと。だから試験受かって再会出来たら、告白しようと思って”
いつか、ユノが言ってた。


「──この話は終わりだ。クレア、1つだけ……言っておく…………試験に受かれば、オレが守ってやれる」
「守ってもらわなくていい……ノアなんて……っ」


大切な思い出は呆気なく破られた。
無知って残酷だ……そう思わずにはいられない──


「嫌いでも構わない。けど、お前を守るのが償いって思ってる」
「意味、分かんない……」
「……もし、オレがいなくなったら……オペラの所へ行け。唯一、信じてるヤツだから」


“試験までゆっくり休めよ”
そう言って、ノアは出て行った。

──色んなことがありすぎた。
頭の中、ごちゃごちゃだ……
何を信じたらいいのか……分からないよ……

ベッドに腰を下ろし、天井を見上げる。
自然と涙が溢れ、止めどなく流れる──
私は声をあげて泣いた。
泣いて泣いて……涙が枯れた頃、ベッドに倒れこんだ。
それでもまだ……涙は流れてきた。

──ふと、ポケットの膨らみが気になった。
取り出してみると、再会したあの日にノアから渡された小さな紙包みだった。

そう言えば、見てなかったっけ……
どうでもいいや──

窓から投げ捨てようとした。
でも…………出来なかった。

窓から見えた夜空に見とれてしまったから……きっと、そうだ。
今夜は赤い月……まん丸の林檎飴みたいに──


「…………コルク……」


あの日、食べた林檎飴。
今でもハッキリと覚えてる。
甘くて、甘酸っぱくて……それから、彼の食べ方が微笑ましくて。
それから──



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