Moon and Apple Candy




「──すまない」
「……どうして謝るの? 何も悪いことなんて──」


コルクはとても怖い顔をしていた。
……何か……あるの?


「悪だらけだよ、俺は」
「違うよ。コルクは……皆の勇者じゃない」
「……俺が勇者? 違うな。むしろ悪魔だな」


コルクは何かを誤魔化すように笑った。



「あなたは私を救ってくれた。ううん、ここにいるたくさんの人を──」
「目的の為に何人もの命を奪ってきたとしても、か?」
「え……」
「復讐の為に多くの城を襲い、無差別に殺した。人質として助けたのは……ほんの一部だ」


その言葉に私は何も言えなくなる……
言葉を間違えると……何もかもを壊してしまう気がして──


「けど、もうそれも終わりだ」
「え?」
「見付けたんだ。ずっと探してた奴を……」


そう言ったコルクの手は震え、瞳(め)は……殺意に満ちていた。
私を怖がらせないように……必死に殺意を抑えているんだと悟った。

──沈黙を破ったのは、コルクだった。


「……レオン・ハルト・ディスカ・オスカ……レオンは、ディオスと名乗っていた」
「ディオスって……」
「そう、クレアの住む城の者だ。彼は俺の叔父であり、父と兄を殺した奴だ」


コルクの話によると、ディオス様はコルクの父親の弟。
しかし、ディオス様は自身の兄とその息子を殺した。
後継者を消すことで、このお城を滅ぼす為に……
幼かったコルクは悲しむ間もなく、後継者として上に立つことになった。
右も左も分からないながらも、コルクは父の背中を思い出し真似てきた……と。


「ずっと試行錯誤で……トップと呼ぶには幼すぎるんだよ、俺は」


その裏では、必死に敵(かたき)であるディオス様を探していた。


「……母も……見付けたんだけど、もう……手遅れだった。奴だけは……許すわけにはいかない」


怒りに震えるその瞳(め)には、涙が滲んでいた。

“人質は殺すつもりだった。だが、話してみると、人だった。どこぞの悪の門を潜っても……人だった”

だから、自分が守るって決めたんだね──


「……悪いな、こんな話…………忘れてくれ」


その言葉と共に、また沈黙が続いた──



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