Moonlight




──捕まった鳥は檻の中。
外の世界を知っているから、泪を流すの。
けれど生まれた時から檻にいる鳥は、何も思わない。
それが当たり前だから──


「……女?」


目の前に剣を突きつけられ、身体中が震える。


「だ……れ?」


顔を上げると、見たことのない美しい男性がいた。
何より、色の違う瞳(め)……金色とコバルトブルーの瞳に吸い込まれるように目が離せない。


「陛下、奴らが来ました!」
「女、お前は人質だ」


“人質”……?
本で読んだことがあった。
“人質”は、もはや……人の扱いでは──


「え?……えっと……」
「遠慮はいらない。好きなものを選ぶといい」


連れていかれたのは、大きなお城。
差し出されたのは本でしか見たことのないドレス達。


「…………白……」
「白だな。その中でも色々あるぞ」


魔法でも使ってるんじゃないかってくらいに次々と出てくる。
勘違いしちゃうよ……人質なのに。


「ん? どうかしたか」
「……人質なのに色々と与えて下さり、ありがとうございます」
「そんなにかしこまらずとも良い。ただ……俺が……目のやり場に困るだけで……」


目のやり場に困る?
どうして?
“これ”は私達にとっては“普通”の格好なのに。


「どうして、ですか? センセイは直ぐに脱げていいと……」
「!……良くない! いや、いいはずがないだろう」


彼は顔を真っ赤に染めて、顔を逸らす。
“人質”って言われた時……彼は羽織を私に掛けてくれた。


「私、“人質”なのに」


思わず笑ってしまった。
すると、彼は
“人質も人間だから”
と言って笑った。

──ド……キン……
生まれて初めて身体に電撃が走り、胸に違和感を感じた。


「そう言えば、まだ名乗っていなかったな……俺はコルティック・ディオカーソン・マルコフだ」
「えと……」
「皆にはコルクと呼んでもらっている」
「私は──」


本当の名前を名乗るべきなのか、“呼び名”で言うべきか……
不思議と出てきたのは──


「……クレア」


本当の名前だった。



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