End of Heaven
「神様さ……一度の罪すら許してくれへんの?」
たった一度の罪……過ち。
神に支えるものはそれすら許されへんのかい……
足元に脱け殻のように転がるアヤメを見る。
こいつは俺から奪ったいうのに、俺には許されんかったんか?
「不公平やな、神様いうんは」
カノンの亡骸をそっと置く。
すると、風は容赦なく彼女をバラバラに破壊しおった。
それだけやない……
木っ端微塵に散りばめた。
「温もりだけやない……形見すら遺させてくれへんのな」
「所詮、君の信ずる神はその程度という事さ」
「アヤメ……お前、生きて──」
アヤメはニヤリと笑う。
「生け贄さえあれば何度だって蘇れるんだよ」
「なん……やて?」
「初めはカノン……今は──」
足元には無惨な姿で息絶えとるコテツが──
「クッソ! 許さへん!」
アヤメは避けることなく、俺の拳を受けた。
「心臓まで届いた、よ……」
ニタリと微笑むと、アヤメは倒れた。
せやけど、彼は数秒で立ち上がった。
「ふざけんなや!!」
何度も何度もアヤメを──
「……はぁ…………ハァハァ……」
「もう、おしまいかな?」
アヤメの声にハッとする。
足元は……パズルのようにバラバラになった仲間達の亡骸、そして両親や兄妹のものまであった……
「みんな悲しい目、してるね。いや、笑っているのかな?」
アヤメの言葉を引き金とし、姿なき仲間達は立ち上がり……
俺に襲いかかる──
「うあぁぁぁあああああああ──!!」
十字架の付いた剣を振り上げる。
けど、俺には生前の姿が重なって……ソレを振り下ろすことなんて出来へんかった。
カラン……
音を立てて、剣が手から滑り落ちる。
身体中の痛みがピークを過ぎた、その時。
みなが笑顔で俺に手を差し伸べてくれた。
俺は……精一杯、手を伸ばした──
「はは……今更、許されても……どないせいちゅーの……」
「何か言った?」
俺の声はもう、声ですらないらしい。
けど、これで悪夢は終わり……や──
「終わらせないけど、ね」
アヤメは……俺を操り、剣を拾い天へと放つ。
瞬間、空は光を失った。
「まだ、だよ」
そう言って、再び俺に剣を握らせた──
無限の生き地獄の始まり……や……
END.
(2022.05.24)
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