Scene5






「あー……じきに夜やな」


橙色に染まる空に漆黒の闇が迫り来る──


「僕の時間じゃないか!」
「……言うと思うたわ! おい、パンツ脱ごうとすんなや!」
「邪魔なんだぜ、コレ」
「むしろお前が視界の邪魔や」


俺とジュンのやり取りを少し離れた所で見とった、フィアナが何かをコッチに投げた。


「キノコ?」


ソレはキノコが糸でいくつも連なっている、ネックレスやった。


「ほれ、お前にプレゼントみたいやで」


俺はジュンの首にかける。


「何かしっくりこねぇぞ?」
「あ、それキノちゃん下着です……なんか履き心地を気にしていたので……」
「マジで!? うっわー! すげー嬉しい ! 履く履くぅー!」
「好評たったらその……オルフェ様のも──」
「作らんでええ!」
「うぅ~ん……履き心地、最悪だぜ……」


うっとりして肩を落とす、ジュン。
そら、そうやろ……


「毒キノコやと思うで、ソレ」
「なっ!! どうりで……嗚呼、毒に犯されていく……」


回転しながら倒れる、ジュン。


「先に進むで。女の子に野宿はさせられへんからな。危ない奴もおるし」
「私なら大丈夫です。キノちゃんが守ってくれるから……」


ジュンに渡したキノコの下着は……好意なん? ……身を守る為のものやったん?


「危ない奴……僕、狙われるじゃねーか」
「お前や、お前! そもそも、敵やろ! 毒はどないしたん!?」
「……ったく。人の話、聞いてなかったのか? 誘惑と殺るチャンス探るって言ったよな。因みにその程度の毒は僕には効かないよ」


ジュンの肌は心なしか、さっきよりも艶やかになった気もする……?


「適量の毒は僕の魅力を引き立てるのさ」
「……艶やかちゃうわ。冷や汗やん、ソレ」


思いきり毒くらって、無駄に我慢しとるで……

──そうこうしとるうちに空が暗くなっていた。


「すまん、フィアナ……今夜は野宿や……」
「……はい。あの……私……」
「何や? あ、まさかトイ──」
「さっき、そこで済ませました」


フィアナは笑顔で言った。

……女の子に何ちゅーことさせたんや……
気遣いすら出来へんなんて……


「ついでにお風呂も借りたんですよ」
「……はい?」
「女将さんがすごく良い方で──」
「ちょい待て、待て。宿、あったん?」
「はい」
「……はよ、言わんかーい!」




END.
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