Scene2





よう考えたら、家の外を一人で歩くなんて初めてやない?
学生時代は誰かしら、一緒やった。
高校は進学せえへんで、家での修行に入った。


「一人、めっさ気楽やんな」


せやけど、この度の目的は気楽なもんやない。
カノンもそうやけど、ミストのことも気がかりや。
あの力でどこぞに飛ばされたのか……
恐怖に怯えて……いや、それはあらへんか。
とにかくや、聞き込みもせえへんと。


「おーい、誰かおるかー?」


俺の声は虚しく、木霊するだけやった。

──歩きながら目に入った、生き物にギョッとする。


「トカゲちゃうで……? サラマンダー……?」


まだ家からそう離れていない場所での違和感に胸騒ぎがしよる。
アヤメ……ネクロマンサーと何や関係あるんか?

──そんなことを考えておったら、目の前にうずくまる女の子がいた。


「あの……俺と同じような顔の女の子を見掛けんかったか?」


初対面でシスター探しておる言うたら、何や勘違いされそうやし……
先ずはフレンドリーにと、ミストのことを聞いた。


「いやぁ! 人!!」
「え! 自分も人やん!」
「私……自分以外の人間が苦手! 離れて下さい……けど、一人にしないで下さい!」


ど、どっちやねん……
なんや、面倒な子やな……


「……それで、何しとん?」
「蟻さん、踏んじゃって……どうしたらいいのか分からなくて」
「しゃーないやろ、わざとじゃ──」
「明日、雨になっちゃうわ!……きっと」
「そら迷信や……それにや、自然の摂理やて彼らも分かってる思うで?」


そう言った俺を見上げ、彼女はハッとする。


「し、神父様……?」
「一応……な」
「神父様! 私の罪は許されるのでしょうか!」


言いながら、涙ぐみながら俺をじっと見つめる。


「……蟻なら大丈夫やて」
「今朝は……牛の栄養を奪いました。昨日なんて魚をいたぶるように焼死して──」
「自然の摂理や! 牛乳飲んで自分の乳育てて、魚食べて足腰強くなったやろ?!」
「神父様の言うとおりだわ! もう一生ついてく!」


突然、距離感が縮まる。
……何でや!


「遠慮するて! 俺、今は──」
「神父様と同じ顔の少女、探すお手伝いが出来るかもですし」
「何やて……?」
「私はフィアナ……ちょっとした能力(ちから)があるの」


彼女……フィアナは、笑顔で言った。




END.
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