Scene1
──ドッカーン!!──
爆音と共に家は……教会は孤立した。
教会の周りは抉り取られたかのように何もない。
──アヤメの姿も……
「アイツ、逃げおったな……」
「嗚呼……カノンは奴に身ぐるみを剥がされ──」
「いらんナレーションすんなや、カイン」
「追い掛けないんか」
「……身支度せんと」
あの渦……竜巻に俺の身ぐるみ全部剥がされ──
「そのまま行ったらええやん。そこらで葉っぱでも拾って」
「原始人や、それ!」
服を着ながら、ついツッコミを入れる。
「……よっしゃ。行くか」
勢いよくドアを開ける。
「オルフェ……今の音は?」
「父さん、時差ヤバいで……」
「いや、だって……懺悔が中々終わらなくてだな」
父さんは涙ぐむ。
「……父さん、俺──」
「ひとっ走りして、カノン救って唇を奪ってくるわ」
「……母さん? ……何しとん」
「オルフェの心の声を──」
「やめんかい!」
家族全員で、深呼吸を数回。
仕切り直しや。
「漫画やゲーム展開的に行くのね」
「せやね。そんじゃ、行ってく──」
「待ちなさい……ネクロマンサーかも知れないわ」
「ねぐるしいんさー?」
「お馬鹿。ネ・ク・ロ・マ・ン・サー。簡単に言うと人形使いね」
「え? 人形?」
俺だけでなく、カイトと父さんも唖然としとる。
──脳裏に腹話術師とその人形が頭をよぎった。
……多分、違うよな?
「母さん、簡単すぎや……死人や霊を操るってことやろ」
カインが言った。
「それって──」
「せや。眠れる者の魂が──」
「死んでも傍にいてくれるなんて、ええやん! 衣食住も必要あらへんのやろ?!」
「馬鹿か、お前。死人や霊を操るいうことはやな、本人の意思を無視して利用されるっちゅーこっちゃ!」
「なんやて? そんなん許せるか!」
「その調子でカノンを助けて唇も奪ってきなさい」
と、母さんに白い正装服を渡された。
「この服、まだ俺には着る資格ないて……」
「神の加護を受ける資格はあるわ」
「……旅は人を大きく成長させるいうしなぁぁぁー」
父さんは号泣だ。
なんて女々しい男なんや……
「あれ? そういえば、ミストは──?」
✕ ✕ ✕
家中を探し回ったが、ミストは見当たらんかった。
モヤモヤを抱えたまま、俺は旅に出ることになった──
END.
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