Doll Ⅱ
「良かった、3人共。戻ってきてくれて」
教室に戻って来た時、黒髪の男子が話しかけてきた。同じクラスの子だろうけど、名前はわからない。
「お前、また誰かわかんねェって顔に書いてあるぞ」
ハルクに図星つかれた。仕方ないじゃない。友達作ろうと女子しか見てなかったんだから。そのハルクの声が聞こえたのが、彼は苦笑いしながら自己紹介してくれた。
「覚えてなくてごめんなさい」と言ったら、「クラス全員の名前はすぐには覚えられないよね」と、イオリ君はフォローしてくれた。優しい人だ。隣にいる誰かさんなんて、「もう三週間も経つのに、全員どころか半分も覚えてないのはこいつがポンコツだから」って言ったのよ。
今日の夕飯、ハルクだけおかずを少なくしてやる!
「自習になったから、出されたプリントだけやって、それを時間内に提出してくれるかな?」
よく見ると顔は整ってるから、女子に人気ありそうだな。真面目で穏やかな雰囲気で優しい話し方。どことなく…
「お前、イオリみたいなタイプに弱いだろ?真面目で優しそうな優等生」
「!」
頭にきたから、思いっきりハルクの背中を叩いた。
「痛て!お前、オレに対してひどくねェ?」
「余計なこと言うからでしょ!」
気づくと、ミカドとイオリ君がこちらを見ていた。イオリ君が苦笑しながら、
「二人は仲がいいんだね」
「「良くない(ねェ)」」
「息ピッタリじゃん」
ミカドにまでそう言われた。仲良くなんかないわよ、ハルクとなんて!
「つか、あれだっけ?一年の時、ハルクが隣のクラスの女の子と度々噂になってたのって…」
「これ」
これ言うな。無言で背中を叩く。またハルクが痛って言ったけど、気にしない。ハルクが悪いんだから。
「あー、なるほど…」
何がなるほどなのかしら、ミカドは。
ここにいても埒があかないわ。さっさと教室に入ろう。
「イオリ君、プリントって?」
「もう配ってあるから席にあると思うよ」
イオリ君に話しかけながら、ハルク達を置いて、教室に入った。
「アリスのヤツ、逃げやがった」
「ハルク、アリスちゃんに対しては他の子とは違うじゃん」
「アリスに気なんか使うかよ」
「彼女だから?」
「……違ェよ。アイツはそんなんじゃねェ」
「ふーん…」
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