Aquilegia

「なあ」

「何?」

「あそこで待ってんの?アイツじゃね?」


家に着く手前、リゼルに声をかけられた。確かにリゼルの言うように玄関でハルクが待っていた。既に私の姿は捉えている。静かに私がそっちへ向かうのを待っているようだ。
間違いない。あれはかなり怒っている。

そうだよね。リゼルにおんぶする前にスマホの電源つけただけで、着信、メッセ、留守番電話が大量に入ってたし。全部ハルクから。



「アーリース!!」

「ごめん!ハルク…」

「ごめんで済めば、警察なんていらねェんだよ!!てか、今までどこにいたんだよ!連絡しても繋がらないし」


そうだね。ハルクには本当に申し訳ないとは思っているんだけど、今日だけは一人であの場所に行きたかったから。
だから、このことはハルクには言わない。



「何で目を逸らすんだよ!」

「とある事情がありまして…」

「オレを待ってただけだよ、コイツは」


リゼルがいきなりそんなことを言い出した。え?何で嘘つくの?リゼルは関係ないのに…。



「お前を?」

「ああ。オレが今日約束したことを忘れちまって、アリスをずっと待たせちまったんだよ。だから、コイツを怒らねーでくんね?オレが悪かっただけだから」

「違うよ!リゼルは関係ないよ。私がただ勝手に待っていただけだから。リゼルは通りかかっただけなの!だから、怒るなら私だけにして」

「……わかった。もうそれ以上は怒らねェよ。とにかくアリスは家に入れ。風呂沸いてっから」

「わかった…」


リゼルに下ろしてもらい、私は家に入る。が、一度、後ろを振り返って、頭を下げる。



「リゼル、送ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね」

「ああ、お前こそ転ぶなよ」

「うん!」


ハルクとリゼルだけ残すのは不安だったけど、私は言われた通りにお風呂場に向かった。


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