Mandarin
【ハルクside】
「アリス、あのさ…」
アリスに思いきって、あのことを聞こうとした。だが、肝心の相手は━━
「……寝てる」
「すぅ…すぅ…」
「はあー。意識してたこっちがバカみてぇ…」
アリスの額に手をあてる。うん、熱はない。あの時はすげー熱かったからな。
でも、この様子だとアリスは覚えてない。アリスドールにキスされたこと、あたしにキスされたことも。あの時から既に熱があったんだろう。ホッとしたような、ちょっと腹が立つような。
「……ったく、こっちはお前がどんな反応するのか気にしてたのに。バカみてぇじゃん」
無防備で眠るアリスを見て、ため息をつく。いくらなんでももう少しは警戒しろ。お前のこと、狙ってるヤツはいるんだから、いつか本当に食べられるぞ。コイツのことはちゃんと見ておかないとダメだな…。
「しっかし、本当に意識してないな、コイツ…」
いつだったか、誰かにあたしのことをどう思っているか聞かれた時、アリスは「姉ちゃんみたい」だと言っていた。
「姉がこんなに弟の面倒を見るわけねーだろ。実の姉弟ならともかく。…お前だからだよ。わかってんのか?」
アリスの頬を軽くつねれば、アリスの眉間にシワが寄る。その顔を見て、思わず笑みがこぼれた。
眠っているアリスにゆっくりと近づき、唇にキスを落とす。
あの時のコイツ、反応が可愛いかったな。最初は怒りのあまりキスしたけど、そのうちに反応が可愛いから、つい見たくなって何度もした。
ラセンにもここまではしたことなかったのに、な。
でも、お前が忘れても、こっちは忘れてないからな。次にこういうことあって、また忘れたら覚悟しろよ?
「おやすみ、アリス…」
【END】
(2022.01.01)
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