Queen anne's Lace
数日後。
今日は終業式。明日から冬休みに入るため、今日で学校に来るのは最後。
買った物は鞄に入っている。あとは渡すだけ。
だが、アリスに渡すチャンスがねぇ。アリスの近くには誰かしらが傍にいて、一人きりになることがねーし。特にあのハルバカが大体傍にいるため、全然渡せねえし。アイツ、マジ邪魔だ。
……。
もう渡すの諦めっか。このうさぎ、どうすっかな。アイツにやる?いや、やっても喜ばねーな。きっと。
帰ろうと階段を下りて、昇降口の方に向かっていると、少し先の廊下のところで大量のゴミ袋に囲まれているアリスの後ろ姿。
何してんだ?アイツ。思わず声をかける。
「アリス」
「あ、リゼル。丁度良かった!ゴミ出しに行きたいんだけど、一人じゃ持てなくて、一つでもいいから持ってもらってもいいかな?」
「あ、ああ。いいぜ…」
「やった!じゃあ、これ持って」
アリスが1つのゴミ袋を渡してくる。いやいや、何でオレが1つでお前が5つも持つんだよ。
「そっちも貸せ」
「え?」
「え?じゃねーよ。そっちに持ってるのも貸せよ。オレが1つで、お前が5つ持ってんのおかしいだろ」
「わかった。ありがとう」
結局、オレが4つ、アリスが2つ持ちながら、ゴミ捨て場に向かう。
「よし。これで全部。リゼル、本当に助かったよ。ありがとう!」
「これくらい別に…」
「帰る途中だったんでしょ?ごめんね。引き止めちゃって。また来年…」
そう言い、アリスが立ち去る。
そうだ。プレゼント。これが最後のチャンスだ。…渡すなら、今しかねぇ。
「アリス!」
名前を呼ぶとアイツはこちらを振り返る。
「リゼル…?」
「……これ、やる」
アリスの前に鞄から取り出したプレゼントを突き出す。
「どうしたの?これ」
「いらなかったら捨てろ。じゃあな」
それをアリスに押しつけて、背を向ける。
何でオレ、あんな渡し方しちまったんだろ。もっと上手く渡せなかったのかよ。こーいう時、自分が嫌になる。
きっとアイツなら上手く渡せんだろう。
不意に制服の裾を引っ張られた。誰だと思い、振り返るとアリスだった。
「ありがとう!」
「は?」
「今これをくれたじゃない?忘れないでよ」
雪結晶の模様がついたライトブルーのうさぎ。アリスが欲しがっていたもの。
「忘れてはねーけど、まあ…」
「これ、本当に欲しかったの。でも、今月はお金使い過ぎちゃって諦めてたんだ。だから、嬉しかった。ありがとう、リゼル」
笑顔でそう言ってくれたアリス。
誰かにプレゼントして、こんなにも喜んでもらえるなんて初めてだった…。
【END】
→後編(ハルク編)