Lily
それはある日のこと。
「ハルク、話があんだけど」
「話?」
「そ。大事なお話♪」
タスクさんはニッコリと笑う。
この人のこういう笑顔を見せる時は、絶対にオレが何かをやらかした時だ。
オレ、最近何かした?
そう考えていると、タスクさんはオレに数枚の写真を見せてきた。
「これ、なーんだ?」
「これがどうしたんで……!?」
げっ。何でこれがここにあるんだ!?しかも、何でタスクさんが持ってるんだよ!証拠は消したはずだ!まずい。まずい!
タスクさんがオレに見せた写真は、すべてオレがリコリスと二人で撮影した時のものだ。
撮影が終わって、リコリスが記念に持って帰りたいと言い出したのだが、オレはそれだけはやめてくれと反対した。リコリスも最初はせっかくのオレとの写真なんだから持ち帰りたいと言っていたが、そんなのを持って帰られたら、間違いなくオレがタスクさんに殺られる。
だから、一時間くらい説得して、ようやくリコリスは諦めてくれた。リコリスには申し訳ないが、これはオレの命に関わるから!
写真もスタッフさんに頼んで、すべて処分してもらった。
なのに、何故その写真があるんだ!?
「い、いや、これには深い理由があって、ですね…」
「深い理由って何?」
笑顔がすげー怖えぇ。目も合わせられねぇし。メデューサみたいに目が合ったら石にされるだろ、これ。リコリスのことになると、本当にタスクさんは怖い。オレ、何度も死にかけてんだからな!?
「これはただ撮影スタッフから指示されたポーズをやっただけなんです…」
「リコリスに壁ドンしたり、抱きつかれたりすることが?」
「そ、そうです。オレがやりたいって言ったわけじゃないです!」
てか、オレがするわけないだろ!この人がいんのに、リコリスにそんなことしたら、間違いなくオレ、殺されるのが目に見えるし。殺されるとわかっててやるわけがない!
「……」
「…タスク、さん?」
「……わかった。今回だけは許してやる。……でも」
「でも?」
「次やったら、お前を━━━━」
タスクさんの言葉にオレは恐怖した。
もう絶対にリコリスとペアでやる撮影だけは拒否しようと誓った。命は大事!
ちなみに何故リコリスとオレの写真が出てきたのかというと、とあるスタッフ(男)が写真を欲しがっていたのにもらえないリコリスがあまりにかわいそうで、オレのいない間にこっそり渡したらしい。
リコリスは喜んで持ち帰り、タスクさんに写真を見せて、撮影での話をタスクさんに話した。リコリスの話は笑顔で聞いていたタスクさんだったけど、内心は絶対に「ハルク、ぶっ殺す」と思っていたはずた。
そして、オレを捕まえて、ブチ切れたわけだ。
つーか、誰だよ!リコリスに写真を渡した野郎は。そいつのせいで危うくオレはタスクさんに殺されそうになったんだぞ!絶対に許さねぇ!!
【END】
(2021.12.11)
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