Bigleaf periwinkle 4
その夜。
風呂から出ると、トイレのドアが開いてて、その前にアリスが蹲っていた。吐いていたんだろう。
声をかけても、アリスの口からは平気、大丈夫だと言うだけ。明らかにアリスの様子はおかしかった。それなのに、アイツは…。
「お前、大丈夫か?」
「…平気。大丈夫、だ、から…」
そんな真っ青な顔で、平気なわけねェだろ。このままコイツを放っておけないから、手を貸そうとした。
「歩けるか?肩に掴ま…」
「いいから!放っておいて…」
手を振り払らわれた。その隙にアリスは立ち上がり、トイレのレバーを押して流す。そうして、トイレのドアを閉めて、中に立てこもった。
ドアの外から叩いてみたが、アイツは出てこない。
「アリス!」
「おれ、平気だから。何ともない!だから、あっちに行って。お願いだから…!」
明らかな拒絶。
普段は笑ってばかりいるくせに、たまに自分の一番弱い部分が見えそうになると必死にそれを隠そうとする。
他のヤツよりはアリスをわかってる。わかっているつもりだった。だけど、深い部分のところだけはあたしにも見せようとしない。
きっとアリスの内側に入れるのは一人だけ。
「……わかった」
仕方ない。今日は引こう。これ以上、アリスに構えば余計に隠されるだけだ。
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