Bigleaf periwinkle 4
【ハルクside】
追いかけながら、名前を呼んでもアイツは止まらない。名前を呼べば、いつもなら止まるはずなのに。いくら呼んでも止まらない。
「アリス、待て」
「……」
「アリス!」
腕を掴むと、アリスはやっと立ち止まった。
「…ってる」
「ん?」
「あいつに八つ当たりしたって、父さんは帰って来ないのはわかってる。それに今だっておれのこと、息子のように可愛がってくれる親父もいる。幸せなのはわかってる!だけど、あいつは…。許せるわけない!あんなことを笑って言ったあいつだけを、あいつだけは絶対に許さない!!」
ここまで激しく感情を出すアリスは、見たことがない。リクがいなくなった時は、怒りよりも悔しさで泣いていたから。
「別に許さなくてもいいんじゃねーの?」
「えっ…」
「だって、お前は許したくないんだろ?」
「そうだけどさ…」
「何?お前は許したいの?」
「許したい気持ちもあるよ。でも、やっぱり許せない気持ちの方が強い」
アリスは優しいから、本当は許したいのだろう。でも、意地になってる部分もある。
それに言った方は悪気なくても、言われた方は絶対忘れないからな。あの女も後になって、アリスの父親が亡くなったのを知ったんだろうな。
「ほら、帰るぞ。お前の好きなもん、作ってやるから」
「う、うん…」
アリスに家に帰ろうと促す。
だけど、あの女があれで終わりなわけがない。きっとまた会いに来るだろう。しつこそうな感じするしな。
てか、最近やたらアリスの周りに昔の女とか集まって来てるのが、気になんだよな。さっきの女も今更会いに来たのも気になるが、あのナナって女も何か怪しい。
アリスドールの仕業か?
どっちにしろ、コイツの傍にいないと何が起きるかわからないし。ちゃんと見ておかねぇと。
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