Bigleaf periwinkle 3
【エリカside】
好きな女の子がいた。
でも、俺は素直になれなくて、自分を見て欲しくてつい意地悪してしまった。
嫌われるとわかっているのに、どんどん意地悪して、気づいた時にはもう遅くて、泣きながら、あの子に言われて、ようやく自分のしたことを後悔した。
会うことはもうないと諦めていた。でも、神様のいたずらか彼女と再会することが出来た。
久しぶりに見た彼女は可愛いくなっていた。
なのに、俺は正反対のことばかり言って、彼女を傷つけてしまう。違う。こんなことを言いたいんじゃない。
“ごめん。ずっと好きだったんだ”
そう伝えたいだけなのに。
「…ま、待てよ!」
「離してよ!」
帰ろうとする彼女を必死に引き止める。今帰らせたら、今度こそ会えなくなってしまう。せめてその前に謝りたい。そんな自分のことしか頭にない俺は泣きそうになってる彼女にも全然気づかず。
そこへ見知らぬ男が現れて、彼女の腕から俺の手を離す。そいつが現れると、店の中にいた女の子達は皆そいつばかりを見ていた。「あの男の子、かっこいい」なんて声もあちこちから聞こえる。確かに俺から見てもかっこよかった。
しかも、彼女とやたら親しい。そこが気に入らない!
俺が気になって、関係を聞いてみても、二人ははぐらかす。
「お前、アリスのなんなんだよ!」
「……。なんなんだろうな?アリス」
「私にもわからないわよ…」
「ふざけんなよ!真面目に答えろ!!」
わからないから、こっちは聞いてんだよ!彼氏とかじゃないよな?すると、彼女の横にいる男が俺を見る。
「そう言うお前もなんだよ?さっきから、アリスにやたら絡んでただろ。オレには構って欲しく見えたけどな…」
「っ…!俺はこいつがかわいそうだから、いてやったんだよ。昔から暗いし、友達も少ないし。だから、わざわざ構ってあげたんだよ!」
違う。俺は好きだから、一緒にいたくて。それなのに、想いとは全然違う言葉ばかりが口に出る。
「へぇー。なるほどな…」
聞いていたそいつがバカにしたような笑みで俺を見る。何が言いたいんだよ。笑ってないでハッキリ言えよ。
「な、なんだよ…」
「お前さ、そんなことすればますますアリスに嫌われるってわかんねぇの?」
「はあ?」
「好きなのにちょっかいかけてるだろ?自分を見て欲しくて。なのに、コイツは全然見てくれない。そりゃそうだ。アリスにはずっと想い寄せてる男がいるからな」
図星だった。
そいつに言い当てられて、俺はカッとなり、つい言ってはならない言葉を吐く。
「……知ってるよ。リクだろ?てか、弟を好きになるなんておかしいだろ!気持ち悪い!」
アリスが俺の前に立ったと同時に頬を叩かれた。彼女を見ると、怒った顔で俺を睨みつけていた。
「ア、アリス…」
「あなたって、本当に変わってないのね。体だけ成長しても中身が全然成長してない。別にあなたに気持ち悪く思われても構わないわ。私、あなたに好かれたいなんて思ってもいないし。二度と顔も見たくない。さよなら!」
アリスが去って行く。待ってくれ。まだ俺、言ってない。一番言わなきゃならないこと。
「アリス、待って。頼む!」
彼女の後を追いかけようとした。だが、あの男が俺の前に立ち塞がる。どけよ!アリスを追いかけないと。
「あそこまでぶちギレのアリスを追いかけてもムダだぜ?」
「うるさい!離せよ!俺はアリスに…」
「アリスがお前の話を素直に聞くと思うか?……ないない。それに告白したところでこっぴどくフラれるだけだぜ。エリカくん?」
「……お前、なんなんだよ。さっきから邪魔しやがって!…このっ!」
頭にきた俺はそいつに殴りかかった。だが、俺の拳は呆気なく受け止められた。嘘だろ。こいつ、何者だよ。
「は、離せよ!」
「いいぜ」
そいつがニコッと笑って答えた。その後、腕を掴まれ、背負い投げられた。受け身も取る間もなく、俺は倒れた。痛て…。立ち上がろうにも立ち上がれない。そこに俺を背負い投げたやつが近づいてきた。何だよ。まだ何かするつもりかよ。俺が倒れているのを見て、もう何もするつもりはないようで手は出して来なかった。が、何故か不敵に笑っていた。
「残念だけど、アリスにはオレがいるから。お前の入る隙間はないから。諦めな?」
何だよ、こいつ。さっきははぐらかしたくせに、やっぱりそうなんじゃないか。
そいつに尋ねる間もなく、そいつは立ち去って行った。入れ替わるように友達が「大丈夫か?」と声をかけられ、何とか起き上がれたが、結局、俺はアリスに謝ることも出来ないまま。
何で俺はアリスの前だと素直になれないんだろうな。優しくもなれない。
「ごめんな。アリス…」
【END】
(2022.01.04)
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