Bigleaf periwinkle 3




【アリスside】



私は何故ここにいるんだろうか。
しかも、会いたくなかった男の子もいて、気分は最悪だ。




放課後。
クラスの子に数合わせで連れて行かれた合コン。他校の女の子達とも合流して、お店に向かう。向かったお店にはまだ男子達が来ていなかった。
しばらくして、やって来た男子の中に彼がいたのだ。彼は私を見て、すぐに気づいたようで、私の前の席に座り出した。



「久しぶりだな?元気か?」


赤髪でつり目の今時のようなチャラい雰囲気の男の子。きっと今でもクラスの中心にいて、モテているのだろう。

昔もよくクラスの中心にいて、友達も多かった。女の子からも好かれていたが、何故か私には冷たかった。他の子には優しいのに、私にだけ意地悪ばっかりで。正直、私にはこの子のどこがいいのか理解が出来ない。


いつだったか、私は彼にリクとお揃いで買ってもらったものを壊されたことがあった。頭にきた私は、彼に怒りをぶつけた。それからだ。彼と一切関わらないようにしたのは。
たまたま進級したのもあったけれど。

二度と会うこともないと思っていた。なのに…。



「アリスだろ?お前、相変わらず暗いな」

「……」

「どうせ彼氏もいないんだろ?だから、ここにいるんだよな。無理無理。お前に出来るわけないじゃん。この中で一番お前が地味だし。他の子達は皆、可愛いのにな…」


別に。私はそういう目的で来たわけじゃない。数合わせだ。ある程度経ったら、帰るつもりでいた。それまでは我慢だ。



「なあ、お前らさ、こいつの彼氏になりたいやついる?……な。ほら、いない。かわいそうだな、お前。よくその地味さで合コンに来られたよな…」


同じ学校の男の子達に話しかけて、バカにしたように私を嘲笑う。本当に嫌なやつ。
合コンなんだから、そんなに私が嫌なら、他の女の子と交流すればいいじゃない。私としても他の子のところに行ってくれた方が楽だし。あなたと話したい子もいるんだから。



「私が嫌なら、他に行けばいいでしょ。別に引き止めてないんだから」

「俺はいてやってんだぞ!他のやつらが座りたくないって言ってんだから」

「あなたがいるくらいなら、誰もいない方がマシよ!」


とうとう我慢出来なくなった私は立ち上がり、鞄を持って、席を離れた。すると、彼が声を荒げる。



「アリス、どこ行くんだよ!」

「帰る」


すると、帰る私を引き止めようと、私の手首を掴む。触らないで。離して!



「…ま、待てよ!」

「離してよ!」


誰も私と彼を止めに入らない。帰りたい。こんなところにいたくないのに、腕を離してくれない。もう沢山よ。何で私ばっかり…!涙が出そうだった。

その時、誰かが私の腕からエリカを離してくれた。顔を上げると、そこにいたのは━━



「ハルク…」

「こんなところにいた。ったく…」

「……っ」

「アリス、お前こんなところで何してんだよ?用ないならさっさと帰るぞ」

「……うん」


ハルクと帰ろうとしたら、黙って見ていた彼が「ちょっと待てよ!」と呼び止めてくる。まだ何かあるの?いい加減、放っておいてよ。だが、彼の視線はハルクの方に向いていた。



「お前、アリスのなんなんだよ!」

「……。なんなんだろうな?アリス」

「私にもわからないわよ…」


私だって、わかるならば説明してるわよ。わからないから説明が出来ない。彼氏じゃないし、家族でもない。他人のようで、他人じゃないし。本当にわからない。ハルクと私の関係は。



「ふざけんなよ!真面目に答えろ!!」


私達の態度にエリカが怒った。でも、何で怒っているのかがよくわからないけれど。イライラしてるようにも見えるし。何で?



「そう言うお前もなんだよ?さっきから、アリスにやたら絡んでただろ。オレには構って欲しく見えたけどな…」

「っ…!俺はこいつがかわいそうだから、いてやったんだよ。昔から暗いし、友達も少ないし。だから、わざわざ構ってあげたんだよ!」

「へぇー。なるほどな…」


それを聞いていたハルクがバカにしたような笑みでエリカを見る。



「な、なんだよ…」

「お前さ、そんなことすればますますアリスに嫌われるってわかんねぇの?」

「はあ?」

「好きなのにちょっかいかけてるだろ?自分を見て欲しくて。なのに、コイツは全然見てくれない。そりゃそうだ。アリスにはずっと想い寄せてる男がいるからな」

「……知ってるよ。リクだろ?てか、弟を好きになるなんておかしいだろ!気持ち悪い!」


それを聞いた私は頭にきて、エリカの前に立つと思いっきり頬を叩いた。



「ア、アリス…」

「あなたって、本当に変わってないのね。体だけ成長しても中身が全然成長してない。別にあなたに気持ち悪く思われても構わないわ。私、あなたに好かれたいなんて思ってもいないし。二度と顔も見たくない。さよなら!」


それだけ告げると、私は今度こそお店を出て行く。
はー。言いたいこと言えてスッキリした。最初からこう言えば良かったんだわ!

しばし歩いていたら、お店の方で凄い音が聞こえた。誰か暴れたのかな?





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