Bigleaf periwinkle 2
幼い頃。
父さんが入院してから、母さんはまだ外で働いていたから、おれのお迎えはいつも遅かった。友達はお母さんが迎えに来て、どんどん帰ってく。寂しくないといえば、嘘になるけど、母さんは必ず迎えに来てくれるから、待っていられる。ただでさえ、父さんのことで大変なのに、おれのことで困らせたくなかった。
おれ以外にもお迎えがまだの女の子がいた。あまり話したことのない子。いつも隅で友達と絵を描いていたのを見たことある。
今も机で何かを描いていた。何を描いてるのか気になって近づく。
「…なにをかいてるの?」
「!?」
驚かせちゃったようで、女の子はおれを見て、怖がっていて、泣きそうな顔でおれを見る。
「おどろかせちゃってごめんね。これ、むらさきいろのおはな…?」
画用紙を覗き込んでみると、紫色の花が描かれていた。でも、花のことはよくわからないから、名前がわからなかった。けど。
「かわいいおはなだね!」
「えっ…ほんとうに?」
「うん」
初めて声を聞いた。とても可愛いらしかった。顔もいつも俯いたところしか見なかったから、まともに見たのも今日が初めてだった。
「ありがとう!」
そう言って、その子が笑った。さっきまでの泣きそうな顔から一転、花が咲いたように笑った。
「このおはなは、わたしとおんなじなまえなの」
「そうなの?」
「うん、このおはなのなまえは…」
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