Ⅱ(前)




そんなある日の休日。
おれの誕生日でもあったが、誕生日だからといって、何かがあるわけじゃない。

部屋で寝転がっているおれと近所に住んでるペリドットがうちに遊びに来ていた。



「暑い…」

「暑いな」


あまりの暑さにやる気が起きない。窓の近くでうちわを扇いでるペリドットを見て、おれは言う。



「ペリちゃん、本当にそう思ってる?全然見えないんだけど!」

「当たり前だ。僕も暑いものは暑い」


そう言いながら、扇いでいたうちわで軽くはたかれた。うちわだから痛くはないんだけど。



「ペリちゃん、サフィに似てきてない?」

「そりゃ何年も一緒にいれば似てくるだろ」

「似ないでよー。サフィがもう一人増えたら、おれが持たない。ペリちゃん、元に戻って!お願いよー!」

「暑い。離れろ」


抱きつこうとしたら、またうちわではたかれた。
ペリドット、地味にイライラしてるな。暑さに強そうな顔してるけど、かなり弱いからね。

おれの部屋に扇風機はついているが、冷房はない。リビングにならあるだろうけど。てか、リビングに行けばいいのか。おやじ達は仕事でいないし。


リビングに行こうかと考えていたら、階段をバタバタと駆け上がる音がし、部屋のドアが開かれる。
どうやら近所のガキどもがいつものように勝手に上がり込んで来たようだ。

暇だと、すぐうちに来るのよ。ま、遊ぶくらいなら、いくらでも相手してやるけどな。



「あ!いた。ルビー」

「相変わらず暇そう!」

「うるせー。暇で悪いか、このやろー!」

「ペリドット、元気?」

「あまり元気じゃないな」

「ねぇねぇ、二人共。暇なら、駄菓子屋に行こうよ!」

「駄菓子屋…」


駄菓子屋か。あそこなら、アイスクリームやアイスキャンディーとか冷たい飲み物はあるよな。どうせウッチャンが暇そうに店番してるだろうし、からかいついでに行くかするか。



「おう。行くか!」

「やった。ルビーのおごりな!」

「ルビーのおごりー!」

「んなわけあるか!おれだって、おごってもらいたいわ!誕生日だぞ!?」

「おめでとう。だから、おごって!」

「おめでとう。誕生日だから、可愛いオレ達のためにおごってよ」

「だめ!お前達がおれにおごりなさい!」


子供相手にぎゃあぎゃあ言い争っていると、ペリドットが呆れながら、こっちを見ていた。



「仕方ない。今日は僕が出すよ」

「ペリドット、本当?」

「いいの?」

「いいよ。ただし、一人400円までだよ?」

「「「「はーい!」」」」


ガキ共は手を挙げて喜ぶ。お前ら、おごってもらえるのなら、誰でもいいのかよ。



「ありがとう!ペリドット」

「ペリドット、大好き!」

「てか、おれとペリドットで対応違くない?」

「当たり前じゃん」

「同じわけないじゃん!」

「そうそう。ケチで貧乏なルビーとは大違い!」

「なんだと!おれだって、たまにはおごってやるだろうが」

「ルビーはおごってくれてもさ、いつも一人100円じゃん」


仕方ないだろ!少ないおれのおこづかいの中から、出してるんだから。



「そうそう!」

「貧乏!」

「おーまーえーらー。待てこらー!」

「ルビーが来るぞ!」

「逃げろー!」

「逃がすかー!」


ガキ共は、部屋から出て行く。おれはあいつらを捕まえようと後を追いかけるように部屋を出る。



「まったく。ルビーも同レベルだな…」


ペリドットは窓を閉めてから、ルビーの部屋を出た。




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