Smell of Blood
「…キューッ」
「クッキー食べろって?アイツはこれをお前にやったんだろ…」
「キュッ!」
「わかった。食べる……………うまい」
「キュ、キューッ」
「そうだな。昔に比べると上手になってんな。昔はパサパサだったり、粉っぽかったのに」
ハルクは、昔を思い出す。
一人、ブランコに座る少年。
そこへ少女が少年の元に駆け寄る。手には、作ってきたばかりのクッキーを持って。
「ハルちゃん!クッキーつくったの!たべてー!」
「……うん」
クッキーを一つ掴み、食べた。しかし、少年は何も言わない。すると、少女もクッキーを一つ掴み、食べる。
「……うっ。こなっぽい。おいしくないね。ごめん」
「たべる。アリちゃんがせっかくつくってくれたものだから」
少年は、残っていたクッキーを全て平らげた。それを見た少女は、最初こそは目を丸くしていたが、少年に笑いかけながら、優しく言った。
「ありがとう」と───
あの時に比べたら、アイツの作ったクッキーはかなりおいしくなっていた。
でも、今のアイツは“オレ”を覚えていねェ。ある理由から、記憶を消されたから。
それでも。
また会えたから、今はそれでいい。
【END】
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