使い魔 Ⅰ


アンバーくんに野菜スープとフルーツゼリーを作ってみた。いきなり食べ物を与えても食べないかもしれないから、まずは慣れてもらう感じで、この二つにした。リク様にも手伝ってもらってしまったわ。リク様は料理とかはやったことないと言っていたけど、器用にこなしていたけど。

作ったものをアガットくんやクロッカスくんに味見させてみたら、反応は良かった。しかし、これはアンバーくんの食事だ。果たして、彼は食べてくれるか!?野菜スープをスプーンで掬い、アンバーくんに差し出す。



「アンバーくん」

「キュッ!」


アガットくんもアンバーくんに声をかける。私の横でリク様とクロッカスくんも様子を見ていた。だが、アンバーくんは動かない。やっぱりだめだったかな、と思っていたら、アンバーくんがスプーンに近寄る。鼻をピクピクさせながら匂いを嗅いでいる。可愛い。見てられる…!

ペロッ。
アンバーくんがスープを舐める。味わっているのか、口をモゴモゴさせていた。
すると、再びスープを舐めた。それを何度か繰り返すと、スプーンの中にあったスープがなくなった。アンバーくんが小さく鳴く。



「キュッ…」

「おかわりと言ってますよ、アリスさん」

「え、本当ですか!?」


私はスプーンにスープを掬い、アンバーくんに再度差し出すと、彼はペロペロと舐めていた。



「キュッ!」

「……キュッ」

「どうやら気に入ったみたいですね、アンバー。アガットがどうだったか聞いたら、おいしいって答えましたよ。もうスプーンはいらないみたいです。アンバーが自分で飲めると言ってます。アリスさんにありがとうっと伝えてます」

「良かった。無理しない範囲で飲んでね!」

「……キュッ」


アンバーくんが返事してくれた。
その後、アンバーくんはお皿にいれたスープを全部飲んでくれた。ゼリーまではお腹いっぱいで入らなかったから、明日の食事に回すことにした。



「アンバー、食べてくれましたね」

「はい。食べてくれるか不安でしたけど、安心しました。しばらくは野菜スープにして、慣れてから固形物をあげようと思います!」

「それがいいですね。アリスさんは本当に優しいですね」

「そんなことありません!ただ元気になってくれたらいいなと思っただけですから」

「キュッ!」


アガットくんが私の頭の上に乗っかる。



「何?アガットくん…」

「お菓子を催促してますね」

「わかりました。アガットくんのお陰でもあるから、何でも作りますよ。何がいいの?」

「キュッ!!」

「いちごが沢山入ったお菓子を要求してます」

「えー。仕方ないな。家で作ってから、明日持ってきてあげよう!」

「キュッ!」


アンバーくんは、しばらくの間だけ私が食事の世話をすることになった。といっても、食事は一日に一度だけだ。そんなにまだ食がある方ではないからだ。慣れてきたら、増やすつもりだけど。
怪我が治るまではリク様の部屋で預かってもらっている。カルロ様からも許可はもらったらしい。流石にうちにアンバーくんを連れ帰るわけには行かないからね。



夕方。
仕事を終えてから、街に買い物に行き、いちごを買った。丁度セールで安くなっていたから、多めに購入して、家でいちごのお菓子を沢山作った。


そして、翌日。
休憩に入ってから、アンバーくんに食事を与えて、昨日作ったお菓子をリク様にも渡した。思ったより大量に作っちゃったからね…。リク様はおいしいと喜んでくれた。良かったわ!リク様と一緒の時間を過ごした後、少し早めに部屋を出た。

いちごのお菓子をアガットくんに渡すために中庭にやって来た。それを渡そうとアガットくんを探す。だが、姿が見当たらない。



「おかしいな。いつもなら、ここら辺にいると姿を見せてくれるのに…」


仕方ない。取りあえず、ここで待とう。5分くらい待っても来なかったら、また探すことにしよう。
中庭にあるベンチに腰をかける。お菓子の入った箱を横に置いて待っていると───



「キュッ!!」


私の頭の上にアガットくんが現れ、乗っかってきた。やっと来たなー!



「アガットくん、お菓子を持って来たよ!」

「キュッ!キューッ!!」


頭から下りて、お菓子の箱の横に座る。が、何故か振り返り、どこかに向かって、鳴き始める。
ん?何してるんだろう。まるで誰かを呼んでるような…。
しかし、誰も来ない。



「アガットくん、誰か呼んでる?」

「キュッ!」


何て言っているかわからない。アガットは一体、誰を呼んでるんだろう。

そうこうしているうちに、休憩が終わる時間になってしまった。私の隣でアガットくんは、お菓子をパクパクと食べていた。



「おいしい?」

「キュッ!」


私が尋ねると、満面の笑みをする。ふふっ、喜んでもらえて良かった。



「さてと、休憩の時間が終わるから戻るね。アガットくん」

「キュッ、キュッ!」

「食べ過ぎてお腹壊さないでね!またね!」


アガットくんに手を振って、私はそこから離れた。午後も頑張ろう!




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