使い魔 Ⅰ
アリスがリクと共にキッチンで料理を作っている頃、カルロがアンバーを探していた。だが、見つからない。誰かに聞いてみようと談話室に入る。談話室には、タスクとハルクがいた。
「ねぇ。アンバー、知らない?」
「見てねェよ。いないの?」
「呼んでも来ないんだよね。今までこんなこと、なかったんだけど」
「愛想尽かされたんじゃねェ?」
「僕は使い魔にそんな困ったことを頼んだりしてないよ」
そこへアリスの元にいたアガットがハルクの前に現れる。
「キュッ!」
「アガット。お前、またアイツのところに……え?」
ハルクの耳元で何か話すアガット。それを聞いたハルクはカルロの方を向く。
「カルロ」
「何かな?」
「アンバーが怪我して、それをアリスが助けたって」
「え、アリスが?何で!?」
「怪我して動けなくなってるのを見つけて、保護したんだと。衰弱もしてたから、完治するまでは時間かかるって」
「使い魔だよ!?人間には近寄らないはずだろ?」
「最初は怖がってたけど、アガットが大丈夫だと伝えたから今は平気みてェ。今、キッチンで栄養のあるものをアリスとリク兄が作ってるってさ」
「なんで、リクまで見てるんだ…」
「そこまでは知らねェよ。アガットがそう話しているだけだから」
「キュッ!キュッ、キュッ!」
アガットが何やらカルロに向かって、話しかけていた。それを聞いたカルロは少しムッとする。
「アンバーに無理させるなって?口出ししないでくれるかな。アガット。これは僕とアンバーのことなんだから」
「キュッ!キュッ!!」
「完治するまでは、アリスにアンバーの面倒は見てもらうって?何考えて…」
「キュッ!!」
アガットは姿を消した。おそらくまたアリスの元に戻ったのだろう。
「言いたいことだけ言って、戻っちゃったじゃん。アガット。しかも、最後にカルロにバーカって捨て台詞まで」
「ハルク。アガット、使い魔にしては生意気なんじゃない?」
「アガット、間違ったことは言ってねェし」
「それにしてもさー、アガットはアリスにすごい懐いてるよね。お前の傍よりもアリスの方にばっかいんじゃねェの?」
「使い魔の中で一番人間を憎んでいたのに、いつからあんなに心を許してるんだろうね…」
「飼い主に似たんじゃねェの?」
「似てねェよ!」
「どうかな。お前が甘えられないから、アガットが代わりに甘えてるのかもね」
「違ェよ!……ったく」
すると、怒ったハルクは立ち上がり、談話室を出て行ってしまった。
「ハルクはどこに行ったと思う?」
「そんなの決まってんじゃん」
二人は顔を見合わせて、笑う。
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