使い魔 Ⅰ
「キュー…キュー…」
どこからか鳴き声が聞こえた。
使い魔の子かな?でも、一体、どこからなのか、周りを見渡す。だが、見つからない。どこだろう?
「キュー…」
また鳴き声がした。何か弱々しいな。どこか怪我して動けないんじゃ…。急いで見つけてあげないと。どこー?
「返事してー!」
「キュッ!!」
その声は返事をすると、私の肩に乗ってきた。ん?
「アガットくん…」
「キュッ!」
今のアガットくんの声だったの?
そう思っていたら、「キュー…」って弱々しい声はまだする。違う。別の子だ。
「アガットくん。この近くに使い魔の子、いないかな?わかる?」
「キュー?……キュッ!!」
すると、こっちと言わんばかりにアガットくんは飛んでく。
「…待って!」
急いで後を追いかけると、見つけにくいところにその子はいた。やっぱりアガットくんと同じ使い魔の子だった。
「いた!」
私の声にその子がビクッと体を震わせる。しまった。怖がらせちゃったかな。
「大丈夫だよ?」
「キュッ!キュッ!」
「キューッ…」
アガットくんがその子に声をかける。流石に何を話しているかまではわからない。その子は怪我をしていて、動けなかったのか少し衰弱してるように見えた。
「ごめんね。嫌かもしれないけど、体、触るよ?」
「……キューッ」
一応、声をかけてから触る。幸い、この子は私が体を触っても暴れたりはしなかった。おとなしい子なのかな?
しかし、これは獣医に見せた方がいいのだろうか?でも、使い魔だから、人間には見せられないか。
取りあえず、近くの空いてる部屋に連れていき、救急箱を持ってきた。血は乾いているけど、ウェットテイッシュで回りを拭い、傷口をきれいにしてから患部に塗り薬をつける。傷はこれでよし!
ちなみに塗り薬はリク様から借りたもの。さっき、救急箱を取りに行く時に会って、事情を話したら貸してくれたのである。
あとは食事だよね。衰弱してたから、何か栄養あるもの。何がいいんだろう?使い魔のことはよくわからないから、リク様に聞いてみよう。その子を連れて、リク様の部屋に行ってみることにした。アガットくんは私の頭に乗ってついてきた。
「リク様。今いいですか?」
「アリスさん、どうかしました?」
私が部屋に入ると、クロッカスくんも姿を見せる。
「あの使い魔の子って、何を食べるんですか?」
「え?その使い魔にもよりますよ。クロッカスは野菜や魚、きのこなどを好んで食べます」
「食べるものは、人と変わらないんですね!」
「そうですね。でも、クロッカスは少食なんで、あまり沢山は食べないんです」
そうなんだ。でも、アガットくん、結構食べるよね。ご飯食べた後に甘いものとか食べてたし。魚も食べるけど、お肉も好きで、野菜も沢山食べるし。大食いなのかな。
「さっきから、アリスさんの頭の上にいるのって…」
頭の上?アガットくんかな。
自分のことを言われたのか、アガットくんが元気良く返事する。
「キュッ!」
「アガットくんです。」
「ハルクの使い魔ですね。随分とアリスさんに懐いていますね」
「最初会った時からこうでしたよ。人見知りしないんですかね?」
「不思議です。使い魔の中で一番警戒心が強いんですよ、アガットは。特に人に対しては憎んでるはずなのに」
「え…」
そうなの?アガットくんに警戒されたこと一度もない。何でだろう?こないだ会ったばかりなのに…。私がよく一人でいる時に、よく姿を見せるし。そういえば、現れた後に必ずハルク様が来るけど。
「怪我してるのはアガットですか?元気そうですけど」
「あ、違います。この子です」
リク様にさっき見つけた子を見せる。その子は少し怯えていた。私の時も少し怯えてたから、人が怖いのかな。
「あれ?この使い魔は…」
「知ってる子ですか?」
「はい。カルロ兄さんの使い魔のアンバーです」
「え!」
カルロ様の使い魔!?
私、最近使い魔の子との遭遇率が高いな。これで四匹目だ。皆、目の色が違う。アンバーくんの目はオレンジだ。
「じゃあ、アンバーに何を食べるか聞いてみますね」
「お願いします」
リク様がアンバーくんに話しかける。その言葉は渡には上手く聞き取れない。時折、クロッカスくんや私の頭にいるアガットくんも話してるみたいでキュッ、キュッ鳴いてるけど、さっぱりだ。
「アンバーはあまり食を取らないみたいですね」
「え!?そうなんですか。怪我を治す間だけでも何か食べさせてあげたいです!」
「キュッ!キュッ!」
アガットくんが何か鳴いていた。それにリク様は困惑している。何て言ってるんだろう?
「あの、アリスさん…」
「はい。どうしました?」
「アガットがアンバーの怪我が治るまでアリスさんの作る食事を与えて欲しいと言ってるんですけど」
え、アガットくん!?
それはあなたが私の料理を食べれるけど、アンバーくんは合わないかもしれないのよ?
「アガットくん。私が作っても、アンバーくんは食べれないかもしれないよ?」
「キュッ!キュッ!」
「アリスさんの料理は使い魔にもおいしく食べられます!自信を持ってと言ってます」
アガットくん、私の腕に期待し過ぎじゃないかな!?取りあえず作ってみよう。
「リク様。キッチンをお借りてもいいですか?」
「僕も一緒に行きますよ。料理長にも僕から説明しますから」
「ありがとうございます!」
そうして、私達はキッチンに向かった。
リク様がいてくれて良かった。許可がすんなり下りたし、食材も好きに使っていいと言われた。私だけなら絶対こうはならなかったわ…。
「それでは作ります!」
「僕も手伝いますよ。出来ることは限られますけど」
「リク様…」
なんて優しいんだろう。私、この人を好きで良かった…!
「では、お言葉に甘えて。リク様にも手伝ってもらいますね!」
「はい。何をしましょうか?」
「そしたら、まず…」
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