Blood of Destiny
その話を三人でしてから、数ヶ月後。
グレンとカルロが二人で話していた。
グ「うちの家系にもとうとう出たね。しかも、運命と毒が同時に」
カ「アリスとリクが恋人になって、まさか、リクにとって、アリスの血が毒だったとは、誰も予想出来なかっただろうね」
グ「それに加え、ハルクの運命の血がアリスなんだよ。もう昼ドラ並のドロドロの愛憎劇だね!」
カ「グレン、楽しんでるだろ」
グ「それはもちろん、楽しいに決まってる」
カ「愛してる女の首筋に他の男の噛み痕を見なきゃいけないのは辛いな」
グ「しかも、自分は飲めないからね…。リク、アリスの血を飲んで死にかけたし」
カ「ああ。何とか回復は出来たけど、一時は本当に危なかった…」
グ「というか、ハルクって、明らかにアリスに好意を持ってるでしょ?」
カ「他のメイドには自分から話しかけないくせに、アリスにだけは近づいてるよ」
グ「婚約者候補達とも身体の関係はあっても、血を飲む時だけなんだって。血を飲まない時は一切、手を出してこないって」
カ「それ、誰から聞いたの?」
グ「うちの使い魔のルチル。何度かその場面に遭遇したんだって」
カ「グレンが命令したんじゃないのか?」
グ「……ご想像に任せるよ。だけど、ある日を境にハルクは、婚約者候補達の血を飲まなくなった。わかるよね?」
カ「アリスの血を飲んだからだろ。運命の血が見つかったなら、もう他の血は飲めない」
グ「そう。でも、手は出してないらしいよ。耐えてるんだろうね。またはリクに遠慮してる」
カ「時間の問題だよ。近いうちにアリスを奪う。あいつのアリスを見る目は普通じゃない」
グ「普通じゃないのは、ハルクの使い魔のアガットもだよ」
カ「アガットか。あんなにひどく人間を憎んでいるのに、アリスの前にだけ、やたら現れるようになったし…。いつだったか、僕にバカって言って来たよ!」
グ「カルちゃん、アガットに嫌われてるよね?アンバーに対して、雑に扱ってるからじゃないの?」
カ「自分の使い魔だよ?好き勝手に使うのは、当たり前だろ」
グ「もう少し優しくしてあげなきゃ、本当にいなくなっちゃうよ?それにアガットだけじゃないんだよ。ルチルはそうじゃないけど、他の使い魔達もアリスには懐いてる」
カ「アンバーもね。怪我をして助けられてから、アリスの方に行くようになった」
グ「使い魔だって、人間にひどいことをされて嫌いな子達ばかりなんだよ?それをアリスは、ことごとく壊して、心を許されて、懐かれてる。本当に不思議な娘だよね。そのうち使い魔だけでなく、吸血鬼の俺達ですら…」
カ「ありえない。少なくとも僕はない。人間なんて気持ちが悪い…」
そう言って、カルロは部屋を出てしまった。それを静かに見送ったグレンは、一人呟く。
「意外に頑ななカルちゃんがあっけなく落ちるかもしれないのに…。ま、うちの兄弟達は血は繋がっているし、俺もそうかもしれないね…」
【END】
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