Blood of Destiny
グ「知ってる?俺達、吸血鬼にとって特別な血があるんだって」
カ「好きだね。そういう話」
グ「カルちゃん、信じてない!」
カ「信じてないよ。僕はこの目で見たことにしか信じないから」
グ「つまんない男だよねー、カルちゃんは。リクは聞いてくれるよね!カルちゃんと違って、優しいから」
リ「少し気になるかな。グレン兄さんの言った特別な血って何?」
グ「よくぞ聞いてくれました!あのさ、吸血鬼の俺達は血がないと生きていけないでしょ?」
リ「うん。中には直接、人間から吸いたくない者はパックになっているタイプを飲んでたりするけど。僕もパックを飲んでるし」
グ「そうそう。でも、あれはあまり美味しくないよね。やっぱり血は新鮮な……おっと、話が逸れちゃった。特別な血っていうのは、俺達それぞれにピッタリ合う血があるらしいんだ。その名もデスティニーブラッド」
リ「運命の血?」
グ「まんまだよね!でも、自分に合う血が見つかること自体が奇跡に近いんだって。それくらい見つかるのが難しいらしいよ」
カ「くっだらない。運命の血なんて、あるわけないだろ」
グ「あらー、興味ないとか言いながらも、ちゃんと聞いてるよね!」
カ「本も読み終わったからね」
グ「素直じゃなーい!」
カ「うるさい」
リ「それで、デスティニーブラッドを見つけた吸血鬼はいるの?」
グ「いるよ」
カ「全然、奇跡じゃない」
グ「それでも一割も満たないんじゃないかな?ほとんどが見つからないまま、普通に生きてるからね」
リ「見つけたら、更に長生きするとかあるの?」
カ「そもそも僕達は、長生きする種族なのに?これ以上、長く生きてもね…」
グ「でも、不老不死じゃないからね。突然、死ぬこともあるよ?例えば、吸血鬼ハンターに襲われたりとか。カルちゃんも一度、死にかけたよね?ウィスタリア・クローツによって」
カ「……………」
グ「ごめん。それは禁句だったね」
リ「カルロ兄さんにとって、合わない相手だからね。それ以上は触れないであげて」
グ「了解。さて、デスティニーブラッドについては、まだ謎が多いんだよ。だけど、それを見つけた者の話を聞いて、まとめた文献によると、それぞれ違うみたいなんだよね。どうやら、自分にしかわからない何かがあるんだって。甘い匂いがしたとか、血を持つ相手だけが光って見えたとかさ」
カ「胡散臭い…」
リ「色々あるけど、要はその時、自分のデスティニーブラッドが見つからないとわからないんだね」
グ「そう。あとね、デスティニーブラッドとは反対の血もあるんだ。ポイズンブラッド。毒の血」
カ「本当に安直」
リ「毒?」
グ「そう。毒の血はおいしさ関係なく、それを飲んだ瞬間に吐いてしまう。そして、対応を間違えると死に至る。他の者には普通の血でも、自分には害があるってことだからね。まあ、こっちは運命の血に比べると、見つかること自体が稀らしいから、本当にあるかどうか疑われてる」
リ「残してないだけかもしれないけど」
グ「隠してるところもあるかもしれないね。うちの家系には、今まで運命の血も毒の血もどちらも見つかってはないよ」
カ「確かにうちでは、見つかっていないね。じゃあ、どちらもないんじゃない?誰かの妄想、または虚言癖」
グ「カルちゃん、リアリストだね。もっと夢見なよ!」
カ「夢なんか見たって、仕方ないだろ!僕ら、人間と違って、そこそこは生きてるんだからさ」
リ「二人共、喧嘩しないでよ」
カ「人間の血は、おいしい血もあれば、そうじゃない血もあるよね?いくら美人だからって、血もおいしいわけじゃない。むしろ、全然おいしくなかったこともある。性格悪いと、血がまずいのかもしれないけど」
グ「カルちゃん、過去にあった?」
カ「何度もあったよ。吐きそうになるくらいまずくてさ、その後にその人間の女を見たら、性格の汚さが滲み出てたんだよ。だから、噛む人間をよく観察してから選んでる」
リ「そんなに…」
カ「ライは遊び感覚で人間を選んでるけど、あまりまずい血には当たらないんだよね」
グ「ライは野生の勘でしょ?」
リ「うん。ライにしかない勘ね。でも、いつだったか「くそまっずーい!」って叫んでた時があったよ?」
カ「え。……あー。だから、あの時、倉庫に保管してある最高級の血を一缶を丸飲みしてたのか」
リ「あれを丸飲み!?かなりの量があるのに…」
カ「翌日には、ケロリとしてたよ。「身体がすげー軽い!」って、すぐ出かけて行ったし」
グ「ライだからね。俺達は、直接噛んでみないと、おいしいかどうかなんてわからないし。博打みたいなものだよ」
リ「グレン兄さん、博打したことあるの?」
グ「ない!」
カ「だと思った。もしも、恋人の血が毒の血なら、最悪だね」
リ「その相手の血を飲めないからね。飲んだら死んでしまうし」
カ「ましてや、他のやつの運命の血に選ばれたなら、地獄だよ。どう考えても結ばれてはいけないって言われてるようなものだ」
グ「過去にそういうケースがあったみたい」
カ「どうなった?」
グ「恋人を殺して、自分も死んでたり、親族によって、無理矢理別れさせられたりが多いね。どのケースもすべて悲恋に終わってるよ」
リ「それでも恋人と一緒を貫いたケースはないの?」
カ「そんなのあるわけない。一生、純愛を貫けるわけなんてないだろ」
グ「ないよ。やっぱり毒の血は、お互いにとっては難しい問題だし」
カ「……………」
リ「……………」
グ「あと、稀だけど、人間と結ばれる吸血鬼もいたみたいだね。だけど、千年生きる俺達と百年未満で死んでしまう人間からさ、吸血鬼はやっぱり吸血鬼とじゃないとだめなのかもしれない」
カ「………人間は、あっという間に死ぬからね」
リ「……そ、うだね」
グ「過去には、長生きして欲しくて、自分の血を与えた吸血鬼もいたんだよ。でも、人間の寿命より少し長いだけで、すぐに死んじゃうんだって。本当に儚いね…」
リ「……………愛した相手が人間、なだけなのに…」
グ「リクなんか言った?」
リ「ううん。何にも?」
カ「……………」
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