Rai Ⅰ
「だ・れ・に・し・よ・う・か・な……」
適当に捕まえた人間たち。
意識と身体の自由を奪い、吊し上げた。
物色は、ただの前戯でしかない。
結局はみんな飲み干しちゃうからな。
不味かろうが、ブレンドしたらかわんねーもん。
ほら、フルーツ野菜ミックスジュースみてーにさ。
最近の変死事件の犯人も、おれ。
おやじが揉み消してるっぽくてつまんねーけど。
「ライ。今日もたくさん捕まえたね……」
「欲しけりゃわけてやるけど?」
「それじゃ、遠慮なく」
そう言って、カルロは小柄の美女を選んだ。
「今夜も女?」
「生憎、男には興味ないからね」
「結構、いいもん持ってるやついるけどな」
「遊んでから血を吸い尽くす趣味、そろそろ辞めたらどうなの? 悪趣味だよ」
「恐怖に怯える姿、すげー萌えるんだって」
「はい、笑顔で言わない」
カルロが出て行った後、ふと考えた。
「おれの運命の相手が女だったら……おれの寿命、短いかもだな」
加減できなそうだから、すぐくたばっちまうんだろ?
「おれの運命の相手が男だったら……おれのこと、しばらくは楽しませてくれんのかな」
血の気の多いやつ限定、か?
ま、どちらにせよ代わりは……いっぱいいるだろしな。
「手はじめにコイツにすっかなー」
恐怖と絶望が混じり合った悲鳴を聞きながら、血を吸い尽くす。
最初はそれでいい。
けど、段々と血を堪能したくて。
溺れるように飲みたくて……
悲鳴が耳障りになってくる──
「いい加減、だまれよ」
これ、お決まりパターンだな。
「はぁ。満腹……あとはドラにでもくれてやるか」
「聞こえてるっての。食べ残し? 遠慮だぜ、ったく……血生臭すぎ」
「贅沢いうなよ」
「……ははっ! 贅沢してるヤツに言われたくねぇんだけど」
「……まさか、おまえ……運命の──」
ドラは不適に笑う。
「ま、目星は付いてるよ」
「なぁ、運命の血ってどんな?」
「ハルクは甘いって。合わないと死ぬほど辛いみたいだけどな、ははっ!」
「毒の血も味わってみるのもいいかもなー」
口元の血を拭い、舐めながら言った。
「正気かよ……」
「……死ぬほど美味いんだろ?」
「バカか、お前……そのまま死んでろ」
いつものおれなら、追い掛けて半殺しにでもすんだろうけど。
今は満腹、気分もいい。
だから見逃した。
部屋の窓を開ける。
さびた鉄の臭いが四方八方にちっていく。
「はぁ……たまんねー」
余韻に浸ってると、カルロが声をかけてきた。
「今夜も……まあまあだった、かな」
「一人分しか飲まねーからだ」
「まだ、何人か余っていたりするのかな」
「いるよ。うるせーから、半殺しで」
「十分だよ……貰っていく」
「勝手にどーぞ」
鼻うた歌いながら、街行く人を見下ろす。
運命と毒、か。
とちらも捨てがたいじゃねーか。
END.
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