Tasuku Ⅰ




街中が騒がしい。
それもそのはず──


ここ数日、毎日のように男女関係無く変死体が見付かっている。

“首に噛まれたような痕がある”

テレビのニュースや新聞といったものに取り上げられては、道行く人達があらぬ噂話をしている。

父さんは無関係と言うように、無関心。
そうなると僕ら“かぞく”の誰かの仕業ではないと言うことだろう。
すると、いったい誰の仕業なんだ?


「あーあ。おれ、あの子のこと、狙ってたのに」
「可愛いもんな、あの女」
「その隣の男。ドラはあーいう女が好きなんだ?」
「ライは、あんな男のどこがいいの?」
「盛り上がってるとこ悪いんだけど、手伝ってくんねェ?」
「タスク……珍しいじゃん、どーしたの?」


溜め息一つ、タスクは口を開く。


「昨日からリコリスと連絡が着かねェ……今までこんな事なかったのに。オレっちは家に向かうお前達は──」
「僕、リコリスの学校。ちゃちゃっと見てきてやるよ」
「おれは……街に物色がてら行くか」
「……頼むな」


そう言って、タスクは消えた。


「本気で焦ってんだな……はぁ。真面目に物色すっかな」



✕  ✕  ✕


「リコリス!」


ドアを何度も叩く。
──が、物音一つしない。


「……おかしい……何処か出掛ける時は、いつも──」


タスクは恐る恐る、ドアを開ける。


「鍵、掛かってない?……入るな、リコリス」


タスクが中に入ると、淀んだ空気が立ち込めていた。


「……なッ!」


リビングに入り、タスクは息を呑む。
そこにはリコリスの両親が息絶え、倒れていた。


「そ……んな!……血、全部抜かれてる……だと? リコリスは──」


家中を探すが、彼女の姿はどこにもなかった。


「一体、どういう事だ……?」
「いつか父さんに聞いたことがある……子孫を遺す事のみに執着し、その為には手段を選ばない……そんな奴らがいる、と」
「カル……ロ?」


カルロを見た途端、安心したのかタスクの体から力が抜ける。


「様子を見に行くにしては遅いと思ってね…………此処に向かう途中、怪しげな棺を担いだ連中を見掛けた。この状況を見る限り、無関係とは思えないな」
「……誰だよ、ソイツ!」
「分からない。だが、やる事が惨すぎるな……一先ず、戻って父さんに報告しよう」
「……頼らねェよ……アイツがリコリスの為に動いてくれるとは思えねェ」
「なら、父さんを上手く利用したらいい」


カルロはタスクに耳打ちをする。


「……出来るのか?……オレっちに……」
「やらなければ分からない。それに父さんの力があればリコリス嬢を助けるのも容易い事かも知れないよ?」


その言葉を聞き、タスクは屋根を渡り歩き帰路につく。


「……容易いね、タスクも」





END.
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