序章 side A

一時期、かなり危なかったが、リク様は何とか一命を取り留めた。

部屋にはベッドで眠るリク様、その横で見守る私と壁にもたれ、腕を組むカルロ様がいた。





「リクは君の血を飲んだら、倒れたんだよね?」

「……はい」



それを聞いて、カルロ様はしばし黙り込む。そして、私に衝撃的なことを告げる。





「アリスが普通の血ならば、リクは倒れることはなかったんだよ」

「普通の血って…。どういう意味ですか?」

「吸血鬼が血を飲んで生きるのは知ってるよね?」

「はい」

「吸血鬼は人間の血なら、ほとんど飲める。多少はうまい血やまずい血もあるし、それは吸血鬼にとって個人差はあるんだけどね。その中には毒になる血もあるんだ。それもなかなかないんだけど、稀にあってさ。飲んだ瞬間に拒否反応をしてしまう血が。それを飲んでしまったら…もう言わなくてもわかるよね?」



この後の言葉は、聞きたくなかった。

でも、変えられない事実。
私とリク様にとって、避けられない問題だ。





「君の血は、リクにとっては“毒”なんだよ」

「私の血が毒…」

「そう。君の血は、リクを殺すんだ」



大好きな人を私が殺してしまうなんて、思ってもみなかった。





「君とリクは一緒になれない。吸血鬼は血がないと生きていけないから。いくら愛した相手でもその血が毒ならば、リクは死ぬよ…」

「リク様が、私の血を飲んだだけで死ぬ…」



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