Haluku Ⅱ
親父の手にアガットがいた。
オレの姿を見て、キュッ!…と鳴いた。
「アガット、返せよ!」
「まずは質問に答えてからだ」
親父からアガットを奪おうとした。しかし、上手く避けられた。ちっ。
きっとオレの返答次第ではアガットを殺すだろう。させてたまるかよ!小さい頃からずっと傍にいてくれた相棒を。
他のヤツは使い魔は使い魔としか考えてねェけど、オレは違う。
アガットはどんな時もオレの傍にいてくれた。アガットがいなかったら、生きていなかった。
それに…。
「……なんだよ」
「この家を出る理由はなんだ?」
「それは…」
アリスの血を飲まないようにするためだ。
これ以上飲んだら、オレはアイツを殺してしまう。殺したくなんかねェ。いくら運命の血を持っていても、飲み過ぎれば死んじまう。
「血を適度に飲まないと、理性を失って、本当の化け物に堕ちるぞ」
「…っ!?」
化け物。
だけど、アイツの血をもう飲まなくてもいいなら、オレは───
すると、親父の後ろにいたカルロがオレの方へやってきた。
コイツ、ニコニコと笑っているが、目は全然笑ってねェ。
「ハルク。運命の血が見つかってから、他の血を受け付けられなくなっただろ?」
「……」
否定はしねェ。
確かにあれからアリス以外の人間の血を飲まなくなった。飲めなくなったが正しいけど。
アリスの血を知ったら、もう他の血は飲めねェ。
「血を飲まなくなったからといって、吸血衝動は抑えられないよ。余計に欲しくてたまらなくなる。運命の血を見つけたなら尚更。抑えられなくなってきたところにアリスを見かけて、襲った。違う?」
「……違…っ……オレ…は」
違わない。
アリスを見かけた瞬間、体が動いていた。しかも、アイツは一人だった。絶好のチャンスだった。
空いてる部屋に連れ込み、嫌がるアイツを押さえて、首筋を噛んだ。
でも、何故か首筋だけじゃ足りなくて、オレはアイツを押し倒して、服を引き裂く。
アイツの体はどこからも甘い匂いがした。特に一番匂いが強かった場所に気がつく。
それはドク、ドクと脈をうち続け、ずっと動いている。死ぬ時以外、止まらない場所。心臓。オレはアイツの心臓の上の肌に歯をつきたて、噛みついた。
そしたら、思った以上に更に血は甘くて、うまくて、やめられなかった───
泣く声が聞こえても、夢中に貪った。
そして、気がついた時には、アイツが倒れていたんだ…。
「運命の血を持っていても、人間なんて、所詮は吸血鬼の餌だ。それ以外に何がある?」
「餌?」
親父がくだらないというようにそう吐き捨てた。アイツが餌…?
“ハルくーん!”
“アリスちゃん!”
“きょうは、なにしてあそぶ?”
幼い頃のアイツがオレを呼ぶ。嬉しくて、オレはアイツの元へ駆け出す。
ひとりぼっちだったオレにアイツは、手を差し出してくれた。
優しくしてくれた。
色んなことを教えてくれた。
「餌じゃねェよ!」
思わず反論していた。
餌じゃねェ。アイツは餌なんかじゃねェんだよ!!
「人間は吸血鬼の餌だよ。ハルク、何で否定をするの?」
「まさかとは思うが、あの娘に恋情など抱いてないだろうな?」
「違ェよ!」
アイツは、リク兄を選んだ。
オレよりも後に出会ったリク兄を…!
「なら、いい。お前にも将来は、純血種の娘と結婚させるからな。そのうち会わせる。さて、コレはお前に返してやる」
そう言って、親父がアガットを離す。自由になったアガットがオレの胸に抱きつく。
「キュッ!キューッ!」
「大丈夫か?」
「キュッ!キュッ!」
アガットがオレを心配していた。
大丈夫だというようにアガットを撫でていたら、アガットは泣いていた。オレの代わりに…。
いつの間にか親父もカルロもいなくなっていた。
結局、オレは家にとどまることを余儀なくされた。
「キュッ!キュッ!」
「……ごめんな。怖い思い、させちまって」
「キュッ!キュウ!」
もうオレにはアガットだけだ。
いつまでも昔に囚われてはダメだ。アリスを忘れなきゃいけねェ時が来たのかもしれない。
それなのに、忘れてはダメだとでもいうのか。アイツとの記憶が次々に浮かんでく。
「……どうすればいいんだよ!」
誰か教えて。
オレはどうしたらいい?
【END】
オレの姿を見て、キュッ!…と鳴いた。
「アガット、返せよ!」
「まずは質問に答えてからだ」
親父からアガットを奪おうとした。しかし、上手く避けられた。ちっ。
きっとオレの返答次第ではアガットを殺すだろう。させてたまるかよ!小さい頃からずっと傍にいてくれた相棒を。
他のヤツは使い魔は使い魔としか考えてねェけど、オレは違う。
アガットはどんな時もオレの傍にいてくれた。アガットがいなかったら、生きていなかった。
それに…。
「……なんだよ」
「この家を出る理由はなんだ?」
「それは…」
アリスの血を飲まないようにするためだ。
これ以上飲んだら、オレはアイツを殺してしまう。殺したくなんかねェ。いくら運命の血を持っていても、飲み過ぎれば死んじまう。
「血を適度に飲まないと、理性を失って、本当の化け物に堕ちるぞ」
「…っ!?」
化け物。
だけど、アイツの血をもう飲まなくてもいいなら、オレは───
すると、親父の後ろにいたカルロがオレの方へやってきた。
コイツ、ニコニコと笑っているが、目は全然笑ってねェ。
「ハルク。運命の血が見つかってから、他の血を受け付けられなくなっただろ?」
「……」
否定はしねェ。
確かにあれからアリス以外の人間の血を飲まなくなった。飲めなくなったが正しいけど。
アリスの血を知ったら、もう他の血は飲めねェ。
「血を飲まなくなったからといって、吸血衝動は抑えられないよ。余計に欲しくてたまらなくなる。運命の血を見つけたなら尚更。抑えられなくなってきたところにアリスを見かけて、襲った。違う?」
「……違…っ……オレ…は」
違わない。
アリスを見かけた瞬間、体が動いていた。しかも、アイツは一人だった。絶好のチャンスだった。
空いてる部屋に連れ込み、嫌がるアイツを押さえて、首筋を噛んだ。
でも、何故か首筋だけじゃ足りなくて、オレはアイツを押し倒して、服を引き裂く。
アイツの体はどこからも甘い匂いがした。特に一番匂いが強かった場所に気がつく。
それはドク、ドクと脈をうち続け、ずっと動いている。死ぬ時以外、止まらない場所。心臓。オレはアイツの心臓の上の肌に歯をつきたて、噛みついた。
そしたら、思った以上に更に血は甘くて、うまくて、やめられなかった───
泣く声が聞こえても、夢中に貪った。
そして、気がついた時には、アイツが倒れていたんだ…。
「運命の血を持っていても、人間なんて、所詮は吸血鬼の餌だ。それ以外に何がある?」
「餌?」
親父がくだらないというようにそう吐き捨てた。アイツが餌…?
“ハルくーん!”
“アリスちゃん!”
“きょうは、なにしてあそぶ?”
幼い頃のアイツがオレを呼ぶ。嬉しくて、オレはアイツの元へ駆け出す。
ひとりぼっちだったオレにアイツは、手を差し出してくれた。
優しくしてくれた。
色んなことを教えてくれた。
「餌じゃねェよ!」
思わず反論していた。
餌じゃねェ。アイツは餌なんかじゃねェんだよ!!
「人間は吸血鬼の餌だよ。ハルク、何で否定をするの?」
「まさかとは思うが、あの娘に恋情など抱いてないだろうな?」
「違ェよ!」
アイツは、リク兄を選んだ。
オレよりも後に出会ったリク兄を…!
「なら、いい。お前にも将来は、純血種の娘と結婚させるからな。そのうち会わせる。さて、コレはお前に返してやる」
そう言って、親父がアガットを離す。自由になったアガットがオレの胸に抱きつく。
「キュッ!キューッ!」
「大丈夫か?」
「キュッ!キュッ!」
アガットがオレを心配していた。
大丈夫だというようにアガットを撫でていたら、アガットは泣いていた。オレの代わりに…。
いつの間にか親父もカルロもいなくなっていた。
結局、オレは家にとどまることを余儀なくされた。
「キュッ!キュッ!」
「……ごめんな。怖い思い、させちまって」
「キュッ!キュウ!」
もうオレにはアガットだけだ。
いつまでも昔に囚われてはダメだ。アリスを忘れなきゃいけねェ時が来たのかもしれない。
それなのに、忘れてはダメだとでもいうのか。アイツとの記憶が次々に浮かんでく。
「……どうすればいいんだよ!」
誰か教えて。
オレはどうしたらいい?
【END】
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