Riku Ⅲ




僕にとって、彼女はリミッターでもあったのかもしれない。


「アリスさん……」


恋しくて堪らない……
この手で触れたい、抱き締めて──

彼女から逃げたのは自分自身。
それなのに……
彼女を求めてしまう。

目を閉じれば、彼女との幸せな日々が甦る。
そう、彼女の温もりだって……こんなにも──


「……冷めた。違う女の名前、呼ぶなんて」
「……え?」


──声にハッとする。
見知らぬ部屋に見知らぬ女性……床に散らばる服。
彼女は裸で……僕も──


「あの! これは一体──」


返事の代わりに頬を強く叩かれた。
嘘……だよね?


「そのアリスって、昨日の女? それとも一昨日の?」
「え?」
「毎日、違う女連れてるの知ってるんだから」


この人の言っている事の意味が全く分からない──


「共通点は金髪ロング。あたしみたいにね、違う?」
「はは……な、何言って──」


それって、アリスさんの特徴と一致するじゃないか……


「それに──」


彼女の話はもう耳に入ってこなかった。
僕は……自分の意思とは別の“何か”に突き動かされてるとでも言うのか?


「まぁ、あたしも好きとは言われてないけどさ」


そう言って、彼女は長い髪を耳に掛ける。
と──


「な──ッ」


首筋には噛み痕……血を吸った形跡があった。

……そ……んな……僕がコレを──?
僕、が──?



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