Alice Ⅰ

少し前までは非日常的な毎日だった。色々と事件があったりもしたし。次から次に起こったというべきな。
しかし、少し前からは穏やかな日々に戻った。



「今日も平和だな…」


悪いことではない。むしろ願っていた日常だった。なのに、私は非日常に慣れてしまったのか、一人でいると、ついボーっとしてしまう。
掃除とかしている時は、何も考えずに済むんだけどね。



「キュッ!」


中庭で休憩していた私の肩に使い魔の子が突然、姿を見せた。目の色からして、アガットくんだった。



「アガットくんだ。元気?あれから怪我してない?」

「キュッ!キュッ!」


元気だよと言わんばかりに鳴く。ふふっ、可愛い。ご主人の方は全然可愛くないけど。



「そうだ!これからお菓子を作るんだ。一緒に来る?」

「キュッ!」

「なら、一緒にキッチンに…」

「ソイツはオレの使い魔だ。勝手に連れて行くな」


む、この声は。
振り返ると、予想通りにハルク様がいた。



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敵のキューケツキ・ハルクが現れた!!

►戦う
話し合う
逃げる


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よし。ここは逃げるを選択だ!戦ったら負けるし、話し合って解決も出来ないだろうからね。



「RPGのゲームじゃねェし。しかも、何で逃げるんだよ。何でオレが敵なんだよ…」

「え…」


何で私の考えてることがわかるの?声に出した覚えはないのに。



「は?口に出してなくても、お前の考えがこっちに流れて……な、何でもねェ!」


何か黙っちゃった。ま、いいか。



「勝手になんてしてません。ちゃんと本人に聞いてます。ねー?」

「キューッ!」


ねーって、返してくれる。私の言うことにちゃんと相槌してくれる。
ほら、アガットくんもそう言ってるじゃない。



「お前、アガットの言葉わかんの?」

「言葉まではわかりませんけど、何となくは…」


キュッとしか鳴かないけど、アガットくんの感情くらいならわかる。嬉しいとか泣いてるとか。
あれ?クロッカスくんはここまでじゃなかったな。なかなか姿は見せなかったし。リク様が言うには人見知りが激しいって言ってたけど。私に慣れてからは姿を見せるようになって、体も触らせてくれるけど。

そういえば、アガットくんは最初から私を怖がることはなかった。逃げも隠れもしなかったし。まるで私を知っているような…。



「……オレも行く」

「え…」

「何だよ。オレがいたら都合悪いのかよ」

「これからお菓子を作るんですよ?」

「だから、何だよ」


この人、甘いものなんて食べなさそうだから言ってるのにな。別について来られても、やましいことはないから平気だけど。










「今日はパンケーキにしよう!」

「キュッ!」

「アガットくんも好きなんだね。じゃあ、早速作ろうか!」

「キューッ!」


私の言うことに返事してくれてる!可愛い。

生地を作っていると、アガットくんがちょこちょこと手伝ってくれる。なんていい子なんだ!その度に「ありがとう」というと、「キュッ」と返してくれるし。まるでどういたしましてと言ってるみたいに…。可愛い過ぎる。



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