Doll 8ーGirl of time




「はあ……」


家から少し離れた公園。
立ち止まって空を見上げる。


「約束してたんじゃなかったのかよ」


背中から聴こえたハルクの声に思わず足を速める。


「私の勝手でしょ」
「避けてんじゃねェぞ」


と、ハルクに道を塞がれてしまう。


「避けてなんか──」
「じゃあ、オレの目を見て言ってみろよ」
「……っ」


肩を掴まれて強引に視線を合わせられる。


「避けられんのは当然だって思ってる。けどな、何か……分かんねェけど調子狂うんだよ!」
「何で?」
「分かんねェってんだろ!」
「……ゴメン」


沈黙。
気まずいまま、ハルクと歩幅を合わせて進む。


「……ねぇ」
「何だよ」
「どこまでついて来るの?」
「別にお前の後なんか──」
「恋人との再会を喜ばなくていいの」
「喜ぶほどか?」
「え?」
「そんなに驚く事か?……あんまり一緒に居たくないんだよ」
「普通、恋人と一緒にいたがるもんじゃない?」
「恋人、ねぇ……」
「否定するの?」
「いや……しないけど。ラセンは一度くっついたら離れないんだよ……アイツ、磁石より手強い」


何でだろう……胸がズキンと痛い。


「それに、オレはベッタリが嫌いなんだよ。他の男は知らねェけど」
「キスとかしちゃうくせに」
「言っとくけどな、アイツとはアレが初めてなんだよ……」
「へ?」
「オレからした事もねェし。って、何を話してんだよ……オレ」


嫌そうな言い方だけど、どこか幸せそうに見えた。
少し、羨ましいな。


「ハルクって、変」
「カッコいいの間違いだろ、ソレ」
「ううん。むしろ、かっこ悪いよ。クラリスってば、ハルクのどこが良かったんだか」
「あ?」
「何でもない」
「ワケあるかよ」


足を速めていく。
今度は軽い足取りで。


「あなた達がアリスとハルクね?」


6歳くらいの少女が道を塞ぐように立っていた。
少女はエメラルドグリーンの長い髪に蝶の飾りを付けて、レースつきのブラウスに黒いワンピースといった格好。
瞳が一瞬、青く見えたけど……気のせいだと思う。
茶色の瞳が私を映していたから。



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