Doll 8ーGirl of time
さっき見た事は忘れよう。
そんな事を思いながら、お菓子の材料を何種類か手に取る。
Arice・Dollに邪魔をされず買い物が出来たが、気晴らしにはならなかった。
「……ただいま」
「おかえり、アリス。今日の夕飯は賑やかよ」
ママが笑顔で言った。
「誰か来るの?」
「もうみんな席に着いてるわよ」
耳を済ませると微かに話し声や笑い声が聞こえて来た。
それは聞き覚えのある声。
「アリス、遅かったじゃない」
「失礼しているぞ」
「何、持ってんの~? お菓子の材料って事は……」
セツナ、ラセン、タスクさん。
そして、ハルクがいた──
「何でコイツ等がって顔すんの、やめてくれる?」
「そんな顔してな──」
「話がある。重要な、話だ」
セツナの表情はいつになく真剣そのものだった。
「後でいいじゃん。アリスの作る菓子を食いながらさ」
「やる気あるのか、タスク」
重い空気が漂いはじめる。
「はい、どんどん食べてね」
ママの言葉でその空気が一瞬で消えた。
会話に花が咲いている。
私とハルクだけが無言で。
「……どうしてリクはここに居ないのかしらね」
そう囁く声が聴こえた。
ママを見ると笑っていた。
その姿が余計に辛い……
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