Doll 1-Heart that failed
「ん……」
眠い目をこする。
「……頭、痛い……」
……嫌な夢のせいだ。
「嫌な事は、さっさと忘れる! 病は気からって言うしね」
私は、髪をくしゃくしゃして窓を見た。
スージィが私を襲ってきて……
リクが助けてくれた……
それで、それで…………
あれ……?
その後は、どうなったんだっけ?
「……あ、また考えてる……」
もう思い出すのは、やめよう。
溜め息を一つ、私は立ち上がる。
「……天気、いいのかな?」
カーテンに伸ばす手が何かに怯えるように震える。
夢の続き……
スージィがリクの体から──
「……違う……」
アレは夢なんだ!
そう言い聞かせて、震える手を握る。
そして、思いきりカーテンを開けた。
「わ……」
太陽の光が眩しい。
窓を開けると清々しい風が私の頬を撫でてくれた。
「気持ちいい……」
私は窓に寄りかかって目を閉じた。
耳を澄ませて聞こえる風の音は、私の心を穏やかにしてくれる。
深呼吸をしてゆっくりと目を開ける。
「……あ」
ベッドの脇にある机が目に留まった。
私は机にある写真立てを手に取る。
一年前に撮った、家族写真。
パパとママに肩を抱かれて、私とリクがいる。
中学最後だからって、ママが言ったんだよね……
……写真のリクは笑っている。
私の好きなリクだ。
「リク……」
……アレは夢だったと改めて思う。
と、ドアをノックする音が聞こえる。
「アリス、起きてるか?」
パパだ。
私は写真立てを机に戻して、ドアを開ける。
パパは 青白い顔をしていた。
「どうしたの?」
「……今、学校から電話があって──」
スージィが死んだ。
その場所は──
パトカーのサイレンが鳴り響く。
夢とくくった壁が壊れていく……
「……は…………リクは?」
パパは、首を横に振った。
「……どこにもいないんだ……」
「う……そ?」
「今も母さんが探してる。俺も今からまた──」
「私も行く!」
「アリスは家にいるんだ」
「嫌! 私もリクを──」
「リクが帰ってきた時、誰もいなかったらどうするんだ?」
「え……」
「誰もリクに“おかえり”って言ってあげられないだろう……」
「……うん」
「よし、いい子だ」
パパは私の頭を優しく撫でてくれた。
その手はいつもよりも大きく感じた。
「犯人がまだ近くにいるかもしれない。家族以外は──」
「分かってる。私だって、いつまでも子供じゃないよ」
「いや、子供だ。パパとママのな」
そう言って、パパは私の頭をポンと叩いて出て行った。
暫くすると、玄関が閉まる音が聞こえた。
同時に生暖かい風が私の髪を揺らす。
「やた、開けっ放しだった」
私は慌てて窓を閉めた。
「これでよし──」
写真立てがコトンと音を立てて倒れた。
「あ……やだ……」
風もないのに……
私は慌てて写真立てを起こす。
「え……」
写真立てのガラスに写る私の後ろに人影が写っている……
恐怖で体が凍りつく。
まさか、リク?
それとも──
「…………スー……ジィ……?」
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