Doll 7-Person is a colander thing




「ハルク、今日もサボりなんだ……」


そういえば、あれから姿を見ていない。

屋上にも行ってみたけど居なかった。
タスクさんに聞こうか迷っていると予鈴が鳴った。


「行かなきゃ」


私は教室へと急いだ。

一日、聞いた話が頭から離れなかった。
セツナとラセンの事。
言っておくけど、別にハルクとの関係が気になるって意味じゃない……
それから、タスクさんの彼女の事……


「はあ……」


溜め息一つ、顔を上げる。
と、花屋の前だった。
いつもの通学路なのに、どうして今まで気付かなかったんだろう?

“帰ろう”と思った時だった。
一輪の花がふと目に留まる。


「リコリス……」


彼岸花の横にある花に書かれていた名前。
もっと分かりやすく言えば、黄色い彼岸花。


「いらっしゃいませ。あら、リコリスが気になりますか?」
「いえ……」
「彼岸花の花言葉は、蘇る思い出なんです」


花屋の店員さんはお構い無しで話し始める。


「リコリスは、感傷に浸ると言われているんです。まあ、人によって様々に……」
「蘇る思い出……感傷に……」


小さく繰り返す。

何でだろう……
胸騒ぎがする……


「名前の由来はギリシャ神話の──」
「すみません、帰ります!」


花屋を出て走る。

何も起こらない事を願いながら。


「見たいテレビでもあんの?」
「ほへ?」


後ろからの声に間抜けな声が出てしまった。
タスクさんだった。


「って、家と逆。もしかして、忘れもん?」
「……嫌な予感がするんです」


私の言葉にタスクさんは眉を顰めた。


「アリス、家に帰れ」


タスクさんの声のトーンが下がる。


「私も行きます」
「…………」
「ダメと言われても行きます。足手まといには──」
「おいてくぞ」
「え……あ、はい!」


てっきり怒鳴られるかと思った。

私達は無言で坂道を上がっていく。
高いビルが聳え立つオフィス街へ向って、ひたすら走る。



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