Doll 6-Scratch of the contract
「アリス。ボーっとして、どうした?」
「うん、何か……だるくて……」
「風邪か?」
「顔、近付けないで……熱は無いと思うし……」
「無理すんな、帰るぜ」
「あと2限だし平気」
「オレがタルいんだっての」
「いつもみたいに一人でサボっていればいいじゃない」
「……出来るかっつの」
「何か言った?」
「言ってねェよ……って、どこ行くんだよ」
「御手洗い」
「……口実じゃねェだろうな?」
「何のよ」
「違うってんならいいけど」
「わけ分からない」
ハルクはトイレの前までついて来た。
今日のハルクは何か変……
何だか、私の傍に居て見守ってくれてるような──
「ないない!」
気のせいと、思いを振り払う。
「アリス──」
「え──?」
呼ぶ声に振り向くも誰も居ない。
幻聴かもしれない、体調のせいだ。
しっかりしないと!
言い聞かせてドアを開ける。
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