Doll 6-Scratch of the contract
「コレが契約の刻印?」
鏡越しに左手の甲を見る。
そこには兎のシルエットの中にハルクの名前が英語で書かれていた。
「そ、これで二人は一心同体だね」
「いっ、一心同体……?」
今まで意識なんてした事なかったのに……
横目でハルクを見る。
「コイツが勘違いするような言い方はやめて下さい!」
「私がって何よ! 勘違いはハルクでしょ!」
「あっははは! 契約前から一心同体みたいなもんだったね」
「違います!!」
否定する言葉がハルクと被った事で、タスクさんはお腹を抱えて笑った。
私はというと、まともにハルクを見る事が出来なくなっていた。
「ハルクは確実に強くなったよ」
「あの剣ですか?」
「Arice・Dollにも通用するはずだ」
「なら──」
「直ぐに消えるのに倒せるワケないって。それに、倒したらアリスの大切な人を助けられないよ」
「じゃあ、どうしたら」
「“Alice Glass”」
私はハッとする。
ハルクも以前、話していた。
「どこにあるか知ってるんですか?」
「アリス、知ってたら最初に渡してるって」
「ですよね……」
「契約で多少は探しやすくなっているかもだし、希望はあるんじゃない?」
「契約で?」
「契約は様々な力を目覚めさせるんだよ。何はともあれ、Arice・Dollよりも先に見つけ出す事だね」
「当たり前です! アイツに渡ったら、どうなるか……」
ただ、壊されるだけじゃない。
ハルクも私と同じ事を感じているんだと思う。
「同時に、ハルクはアリスを守らなきゃダメだよ」
「最初と変わらないな」
「一心同体の意味、分かるよね? アリスが死んだらハルクも──」
「変わらないから大丈夫です」
「あの……私に出来る事は──」
「Arice・Dollに近付かない事だね。例え、“弟の姿”で現れてもだよ」
「リクの姿って、Arice・Dollはリクに──」
「そうじゃない。きっとArice・Dollは今、覚醒(めざめ)の期間に入ってる」
「覚醒の期間?」
「本来の姿に戻る為のね」
「なってどうするってんだよ」
「オレっちが知るワケないだろ。とにかく、その“リク”を演じて何かを仕掛けてこないとは言えないからね」
「……分かりました」
「じゃあ、アリス。行こうか」
「え?タスクさん、アリスだけですか?」
「どこに行くか気になんの?」
「なりません!」
「直ぐ戻るから……」
「ごゆっくり、どーぞ」
私がタスクさんにお願いした。
ハルクはきっと、ダメだって言うから──
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