Doll 5-Man who returned
「ん……」
「ハルク──」
ハルクが薄っすらと目を開ける。
腹部の傷も見る見るうちに塞がっていく。
「……アリス……?」
「良かった……」
「オレ、確か……」
「アリスに感謝すんだな」
タスクさんが私の手を掴んでハルクに見せる。
後ろを見ると死体たちが体勢を立て直していた。
「お前、何で契約なんかしてんだよ!」
私は、返事の変わりに笑顔を見せる。
「笑ってる場合じゃねェだろ……契約の意味、知らね──」
「死に損ないがいきがんな。今必要なのは、お礼だろ?」
「……はい」
ハルクが私に向き直る。
「いい! お礼なんか──」
「余計な事、しやがって……」
今は言い返す気になれなかった。
ハルクの声があまりに弱々しかったから……
「ハルク!」
「いいんです、タスクさん」
死体達が攻撃態勢に入ると、ハルクは私の前に出た。
そして──
「…………ありがとな」
囁いた。
私は驚いてタスクさんを見る。
「ホント、素直じゃねぇヤツだな」
タスクさんは嬉しそうに微笑んだ。
ハルクもまた、頷いて微かに笑顔を浮かべる。
「そんじゃあ行くぜ、ハルク。トドメ、刺すぞ!」
「一気に終わらせてやる」
瞬間──
ハルクの手が光り、剣が現れた。
「タスクさんのと似てるけど……違う……」
ハルクは剣を振り上げる。
「うぉぉおおおおおーっ!!」
剣を振り下ろすと同時にハルクは死体達を斬り倒していく。
タスクさんよりも早い──!?
斬られた死体達は、どす黒い煙となって消えていった。
「……ハァ……ハァ……っ」
ハルクが大の字で倒れる。
と、剣は光となって消えた。
「ハルク、大丈夫?」
「あぁ……少し疲れただけだ」
「そっか、はは……」
安心したと同時に肩の力が抜けて、座り込む。
と、木の影に立つタスクさんが見えた。
目が合うとタスクさんは、ゆっくり口を開く。
「……契約は完了だ──」
タスクさんが低く呟いた後に微笑んだ気がした。
どうして契約させたかったんだろう?
ハルクの為──
本当にそれだけ?
Doll 5-Man who returned....END....
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