Doll 5-Man who returned




「ハルクがいなきゃ何も出来ねぇ……守られてばっか。オレっちもそうやって利用しようとしてんだろ?」
「違──」
「違わない。貰うだけもらって、相手には一切の利益はない……違うか?」
「それは……」
「コイツは強がってるだけだと何で気付かないんだよ!……こんなに傷だらけでも弱音吐かないし!」
「……っ」


タスクさんの言う通りだ。

ハルクはいつだって守ってくれてる。
それなのに私は──


「……契約、します。タスクさんに言われたからじゃなく、自分で決めた事」
「ありがとう、信じるよ」


タスクさんは無邪気な笑顔を見せてくれた。

私はガラスの破片を手に取る。


「急いだ方が良さそうだね」


どこからともなく、低い唸り声が聞こえてくる。


「今度は4匹とか生ぬるい数じゃなさそうだしね……」


タスクさんのこめかみを汗が伝い落ちた。
と、同時にArice・Dollに操られた死体が飛び出してきた。
数は20体を軽く越えている。


「きゃあ!」

……何も起こらない。
目を開ける。


「オレっちが食い止めるから、大丈夫」


いくらタスクさんでも、この数は厳しいと思う。
契約を済ませて引こう。
今の私には、これしか出来ない……


「──っ」


ガラスで左手の薬指を傷つける。
血が流れたのを確認すると、ハルクの指も同じように傷をつけた。
ただし、ハルクは自分の意思じゃない。
私がやった。

そして、指をくっつける。
次第に血が混じり合い濃くなる……


「最後は──」


ハルクに私の薬指をくわえさせ、私もハルクの薬指をくわえる。
鼓動が波打つ……

ゴクン──
飲み込むと体が一瞬、熱くなった。


「出来た……」


タスクさんに向き直る。




「おぅあ!」


タスクさんが死体達に弾き飛ばされた。


「タスクさん、大丈──」
「オレっちの事よりも、ハルクは!?」
「聞いた通りには……でも」
「上出来、じゃん」


砂を払いながらタスクさんは私の前に来た。


「直ぐに目覚めるから」


そう言うと、タスクさんは死体達の中に飛び込んでいく。



.
11/12ページ
スキ