Doll 5-Man who returned




「…………聞いてんの?」
「え?」
「だから、ハルクと契約したの?」
「契約?」
「げ……契約の話すら知らないのかよ……呆れた」


タスクさんは深呼吸一つ、真剣な表情に変わった。

……空気が重たく感じる……
私は思わず、本を持ったまま後ずさる。


「契約内容は“血切り合い”」


距離を詰めてタスクさんが言った。


「……ちぎり……あい?」
「そ。互いに左手薬指を傷つけて血を混じ合わせんの」
「……それって、体内にハルクの血を流すって事?」
「そうだね」
「契約すると何が起きるの?」
「それは──」
「必要ねェよ」

窓からハルクが現れた。


「必要ないだって?  ふざけんのもいい加減にしろよ」
「タスクさん、コイツに余計な事を話さないでくれませんか?」
「余計な……オレっちは、お前を思って──」
「オレなら大丈夫ですから……」
「納得出来ねーぞ……“心-イノチ-”だって大分奪われてるし」


そう言って、タスクさんは窓の外を見る。


「分かるんですか?」
「まあね。オレっちにとっての能力みたいなもんだし」
「能力……?」
「きっと餓えてる。気を付けてね、二人とも」
「タスクさん、アリスを怖がらせる事──」
「ま、アリスはオレっちが守るけど?」
「……なら、安心だな」
「え──」


ハルクは寂しそうに微笑むと、窓から出て行ってしまった。


「んじゃ、オレっち寝るわ。長旅で疲れたしね」
「おやすみなさ──」
「おやすみな、アリス」


タスクさんは私のおでこにキスをした。
ドアが閉まると私の頬を一筋の涙が伝い落ちた。



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