Doll 4-Boy of the lost child




「行ってきます」


リクと再会したあの日から、私はリクの写真を見なくなった。
嫌いになったわけでも、諦めたわけでも、見たくないわけでもなく、リクに頼るのをやめた。
リクの泣き顔、初めて見た日でもあった。

何も出来ない自分に苛立つ。
改めて、私が助けるって決めたんだ。

ダイゴを見付けた、ケインくん。
少しだけ自分とリクを重ねてみた。


「気色悪……朝から嫌なもん見た」
「じゃあ、隣を歩かないでよ」
「オレ様の勝手だろ」
「じゃあ、私が先に行く」
「待てよ、アリス!」


私はハルクを無視して先に行く。


「朝から痴話ゲンカってやつ~?」
「ケインくん?」
「うわ、出やがったし」
「何だよ、その嫌そうな顔……」
「大人気ないよ、ハルク」
「うっせェ」
「あっは! お前らホントに仲いいんだな!」
「どこが──」


ハルクと言葉が重なってしまった。


「アンタも“ありす”?……って事は兄ちゃんのオンナか?」
「ガキ。“兄ちゃん”って誰だ?」
「おいおい、いい歳してヤキモチ妬くなよな」
「だっ、誰が妬いてんだっての!」
「あの兄ちゃんカッコいいから、アンタ……諦めた方がいいよ」
「諦めるも何も──」
「ねえ……“お兄ちゃん”って誰?」


生温かい風が私の頬を撫でる。


「“アリス”って言ってたかな」
「アリスって……まさか、Arice・Doll?」
「そんなだったかな。アイツ、すげーいいヤツだよ」
「おい、ガキ。そいつとどういう関係だ?」


ハルクはケインの胸ぐらを掴む。

Arice・Doll……
もう、リクじゃないんだ……
分かっていても辛い──


「苦し……」


私はケインくんの声に我に返った。


「ハルク!」
「手加減はいらねェ……コイツは──」
「があっ!」
「いって!」


ケインくんがハルクの腕に噛み付いて走り去った。


「ケインくん!」
「アリス。見ろよ、コレ」


ハルクは、ケインくんの噛み痕を見せてきた。


「これは……」



.
6/10ページ
スキ