Doll 27-Intruder
──土曜日。
アリスの家で、アリスとティアラはお菓子作りをしていた。
「卵と牛乳を混ぜて。あ、違うよ。泡立て器」
ティアラは卵を上から落とし割ろうとしたり、ボールを揺すりながら混ぜようとしたり……
常識はずれな事ばかりしようとしては、アリスに逐一教わっていた。
そんな二人をキッチンの外の壁にもたれ掛かり、様子を見ているラセン。
「後は型に入れて……」
アリスはマドレーヌカップに注いで見せる。
それを真似る、ティアラ。
「どろどろ……失敗?」
「失敗じゃないよ。トッピング入れて焼いたら、見たことがあるマフィンになるよ」
「……信じられない……」
「とにかく、好きなトッピングをしよう」
アリスに促され、ティアラはトッピング材料を見る。
チョコレート類・フルーツ類・マシュマロ・クッキー・ナッツ類・シュガー類と様々ある。
「そうだ。ティアラちゃん、一つずつ味見してみようよ!」
ティアラは戸惑うも、小さく頷いた。
「…………美味しい。これも……これも、美味しい!」
どれを味見しても“美味しい”と言うティアラ。
そんな彼女をアリスは笑顔で見ている。
「ティアラちゃん。全部、少しずつ乗せようよ」
「いいの?」
「もちろんだよ」
ティアラは、恥ずかしそうに“ありがとう”と言った。
──トッピングを終え、アリスはオーブンに生地を入れスイッチを押した。
「後は焼き上がるのを待つだけだよ」
アリスの言葉にティアラはオーブンの前に立ち、じっと見つめる。
「暫くかかるよ、ティアラちゃん」
「……そう、なの?」
「えっと、話をしてたらあっという間だよ」
「……分かった」
ティアラは座ったものの、オーブンを気にしている。
「ティアラちゃん、兎が好きなんだね」
「……え?」
「ポシェットが兎だもん」
「ラヴィ……御守りなの」
そう言って、ティアラは“ラヴィ”にそっと口付けた。
「生まれた時から、ずっと一緒。アレより信頼できるし」
「えっと…………あ、アレって……」
「ごめんなさい。何でもない」
ティアラは慌てて、ラヴィから手を離した。
「あ! アリスちゃんのエプロン、可愛いね」
そう言われ、アリスは戸惑う。
それもそのはずだ、フリルもなければ色も至ってシンプル……所謂“普通のエプロン”なのだから。
「ティアラちゃんの服こそ、素敵だよ」
アリスは慌てて、そう言った。
「……アリスって本当に女子だな……女友達とお菓子作り、あたしには想像出来やしない」
そう呟き、ラセンは目を閉じる。
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