Doll 27-Intruder
「コラ! やーっと見付けたぞ……修行を放り投げて駆け落ちか?」
「カブラ、早かったじゃないか」
「これも修行、とでも?」
「ピーン・ポーン!」
カブラはクロノの胸ぐらを掴もうとしたが、躊躇う。
「……クロノ……お前……」
「えっち……」
「違……じゃない、誤魔化すな。自分に嘘は通じない」
「なら、悟れ。勝手に修行しろ」
答えたのはゲッカだった。
「アタイの事はいい……な、カブラ。アイツの時が止まって、アタイらが動き始めたのは気付いてっか?」
「薄々、そう思ってたさ」
そう言って、カブラは視線を落とす。
「さっすがー、冴えてる。普通に起きたと思ってたんだよね、アタイ。けど、違かったんだ」
「違う?」
「力、使う度に更けてんの」
「何処がだよ。お前、昔と変わらな──」
「自分自身が一番理解してんの」
「だから修行は中断だ」
「黙ってな、ゲッカ」
ゲッカは押し黙る。
「修行は継続。その代わり、今まで以上に過酷だよ?」
「……お前の覚悟、無駄にはしまい」
ゲッカは唇を噛み、拳を強く握る。
──夜も更けた頃、ゲッカは眠るカブラの所へ向かう。
「ゲッカ、か。クロノは?」
「水浴びだとよ」
「へぇ。覗きに行くか?」
「……なッ! い、行かん!」
「冗談だって。本気にすんなよ」
咳払い一つ、落ち着いたゲッカが口を開く。
「……クロノは悩んでいた。後にやってくるであろう、青年の事を」
「アイリスのお気に入りだった、あいつか」
「そう、Ⅰ番だ」
「……あいつがクロノを訪ねるって?」
月明かりが二人を照らし、二人は岩影に身を潜める。
「……クロノ曰く、そもそもが力を使いこなせていないとの事だ」
「力?」
「あくまでクロノの憶測だが、Ⅰ~Ⅸと以降は別物」
「Ⅸ、か。懐かしいな」
「…………Ⅴ番までは、俺達の存在を知らない」
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