Doll 27-Intruder
ベッドに鞄と制服、メガネを投げ捨てるティアナ。
そのまま彼はYシャツのボタンに手を掛ける。
「うひゃー。男も女もいい感じだったな」
「ちょっと! ライ!」
「なんだよ、ナイトメア」
“ライ”と呼ばれた、ティアナはニヤッと笑って言った。
「その呼び方はやめてって、何度も言ってるでしょ!」
怒ったのは、“ティアラ”だった。
「相変わらず、嫌いなのかよ。おれはいいと思うんだけどな。おれの名前、“ダークライ”の次くらいに」
風がティアナ……ダークライのYシャツを靡かせる。
首から紐が数本、身体を締め付けるように巻かれていた。
「メア……何度も言ってるでしょ」
「ホント、メアは自分の名前嫌ってんのな」
「……ナイトっていうのが男っぽくて嫌なだけ……」
「おれもナイト(騎士)は嫌だ。サタン(悪魔)のがマシ。サタンメア……はは、似合わねーの!」
そう言いながら、ダークライはスマホを操作する。
「しっかし、転校生って最高だよな。男にも女にもモテんの」
「ねぇ……目的、分かってる?」
「誰から堪能すっかなー」
「ちょっと! 聞いてるの?……絶対に目立つような事はやめて」
“ナイトメア”は“ダークライ”の首の紐を乱暴に掴む。
「メア……そこやめろ……気持ちよくなっちま──」
「変態っ!」
そう言って、彼女は乱暴に手を離した。
「……っはぁ。少しくらい遊んだっていいじゃん。溜まるもん溜まって、死にそうなんだよ」
恍惚な表情を浮かべながら、首の紐に触れるダークライ。
「なら、殺してあげる」
「……メアも溜まってんだろ?」
「言ってる意味が分からない」
「こういう意味」
ダークライは躊躇う事なく、ナイトメアの服の上から胸に触れる。
「胸、ちっせーな。成長期なのに……こんなんじゃ誘惑でき──」
「最低! くたばれ、変態!」
ナイトメアは彼の手を思い切り叩き、振り払う。
「おっと。そう簡単にやられ──」
「何を遊んでいる?」
「ロゼリアかよ。ビックリさせんじゃ──」
「あの御方を失望させるな」
そう言ったのは氷のような冷たい目をした和服の女だった。
和服と言ってもはだけるように着こなし、髪も彼女の目のように刺々しい。
「ロゼ……」
ナイトメアはロゼリアから視線を逸らすと俯いた。
「大丈夫だって。すぐに手に入れてやっからさ」
「失望させるな、そう言った筈だが?」
ロゼリアはダークライの首の紐を全て掴み、締め上げる。
ダークライの表情が恍惚なものから、次第に青ざめていく。
「ロゼ、ライも反省してると思うから」
舌打ち一つ、ロゼリアはダークライを開放する。
ふと、ロゼリアの服に付いた血痕にナイトメアが気付いた。
「……ロゼ、人を……殺したの?」
「後始末をしただけだ」
「……どうして……ロゼだけ……」
「一番、出来がいいからに決まっているだろう?」
そう言って、ロゼリアは不適に笑った。
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