Doll 27-Intruder
………………なぁーんも見えねェ。
あぁ、そうか。
オレっち、セツナと闘って……負けたんだっけ……
それから、それ……から──
はは……思い出さなきゃ良かった。
いや、待てよ……
これは走馬灯なのかもしれねェな。
「──ッ」
いって……
眼球に激痛が走る。
──痛いって事は……オレっちは生きてる……
セツナにやられたのも、現実だ。
……リコリスの事も──
──何であの時、死なせてくれなかった?
「く……そッ」
「まだ起きない方がいいよ」
──声にドキッとした。
「……リコ……リス?」
──声が震える。
リコリス……お前、生きて……んのか?
「良かった……リコリ──」
「誰、それ」
声は“彼女”そのものなのに……違う……のか?
光を失わなければ……っ……
「……き……君の……名前は?」
……リコリス、君だろ?
その声、オレっちが間違えるわけないって。
なぁ、リコリス──?
「分かんない。名前なんかないから」
「名前が……ない?」
「……記憶喪失ってやつなのかもね」
確かに……口調は別人だ。
けど、記憶喪失なら……仕方ないだろ?
「あの……さ。本当の名前、思い出すまで……リコリス……いや、“リコル”そう呼んでもいいか?」
リコリス……彼女の代わりはいない。
分かってる……分かってんだよ!……けど……
“もしかしたら”……可能性を願ってしまう。
「いいけど」
「──ありがとう、リコル……」
「ちょ、何で泣くんだよ!」
「……はは……何でだろな。嬉しいのに」
「お前は?」
「え? あ、そうか……オレっちはタスク」
差し出した手に触れた手は……とても温かかった──
「……お腹空いたよね、何か持って──」
「もう少し、このままでいてくれるか?」
「別にいいけど……」
大好きだった声、こんなに聞いたのはいつぶりだろう。
声が途絶えないように会話を続ける。
リコリスに話したい事は山程あるんだ。
溜めに溜めた思いの分、尽きやしない。
──この手がどんなやつか分かんねぇけど、きっとリコリスみたいなんだろな。
──口調から感じる幼さと、手の大きさ以外は……リコリスそのものに思えた。
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