Prologue Ⅲ
「ほら、急ぐよ!」
段々と、遊園地の観覧車が大きく見えてくる。
「そんなに急ぐと危ない──」
「きゃ──」
ラセンが何かにぶつかり、尻餅を着いた。
「ごめんなさい……」
紫がかった黒髪の少女が頭を下げた。
「いや、あの……こっちこそ──」
言い掛けて顔を上げると、少女はもういなかった。
「大丈夫?」
「あぁ、平気。それより……観覧車、止まって見えない?」
「……えっと……止まっているかも」
「休み!? 信じらんない……あぁ、もう」
コロコロと表情の変わるラセンに思わず吹き出して笑う、アリス。
「やーっと笑ったね」
「え?」
「笑顔、久しぶりに見た。やっぱり、あんたはこうでなくちゃね……何があっても」
アリスは急に真面目な顔になったラセンに
戸惑う。
「……帰ろっか」
「……うん」
「また今度、付き合ってよ」
「……え、あ……うん」
茜色の空が段々と夜の闇に染まっていく──
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