Prologue Ⅲ




「ほら、急ぐよ!」


段々と、遊園地の観覧車が大きく見えてくる。


「そんなに急ぐと危ない──」
「きゃ──」


ラセンが何かにぶつかり、尻餅を着いた。


「ごめんなさい……」


紫がかった黒髪の少女が頭を下げた。


「いや、あの……こっちこそ──」


言い掛けて顔を上げると、少女はもういなかった。


「大丈夫?」
「あぁ、平気。それより……観覧車、止まって見えない?」
「……えっと……止まっているかも」
「休み!? 信じらんない……あぁ、もう」


コロコロと表情の変わるラセンに思わず吹き出して笑う、アリス。


「やーっと笑ったね」
「え?」
「笑顔、久しぶりに見た。やっぱり、あんたはこうでなくちゃね……何があっても」


アリスは急に真面目な顔になったラセンに
戸惑う。


「……帰ろっか」
「……うん」
「また今度、付き合ってよ」
「……え、あ……うん」


茜色の空が段々と夜の闇に染まっていく──



.
20/21ページ
スキ