Prologue Ⅲ
“……誰?”
さっきのアリスが頭から離れねェ──
「リゼル。ちょっといいか」
「今日は修行って気分じゃ──」
「アリスの事だよ」
リゼルの表情が強張る。
「そんで?」
人気のない場所に移動すると、リゼルが口を開いた。
「あいつは今、記憶喪失なんだ。余計な事、喋るなよ」
「記憶喪失って……」
「チャンスとか思ってねェだろな?」
ハルクはリゼルに掴み掛かる。
「思ってね──ぐはッ!」
ハルクに殴られ、リゼルは突き飛ばされる。
「いきなり何す──」
「下心が見え見えなんだよ!」
リゼルは、ハルクの拳をギリギリでかわす。
「はぁ!? ワケ分かんね──ごふッ」
ハルクの蹴りが鳩尾に入り、蹲るリゼル。
「さっきから何なんだよ、テメ──」
「──ッ」
「…………はぁ。ったくよ。好きなだけ殴れよ。今だけなら許してやるよ」
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