Prologue Ⅲ
「アリス──」
「静かにしろよ、ハルク。やっと寝たんだからよ」
「…………それは良かった。良かったけど、なァ……」
「何だよ。文句あんのか?」
リゼルは……アリスを抱き抱えていた。
「どうしてベッドに寝かせねェの?」
「そうしてーんだけど、駄目なんだよ」
「どういう意味だ?」
「アリスが離さねーんだって」
「はぁ? んなワケ──」
「俺ですら、思い出すと今だに足が震えるんだ……察しろよ」
リゼルは苦痛に顔を歪めて言った。
「…………代わる」
「あ?」
「あれからずっと、なんだろ?」
「あ、あぁ」
「代わってやるって言ってんだよ」
そう言って、リゼルからアリスを引き離す。
アリスは、小さな子供のように眠ったままハルクにしがみつく。
震えるアリスの身体をハルクは優しく抱き締める。
「……重症だな……」
ハルクは悔しさに耐えるように唇を噛む。
「……ハルク、お前……なんかあったのか?」
「…………何もねェよ。ただ──」
「あ? 何だよ」
「……何でもねェ……」
「……変なヤツ」
その言葉にハルクは一瞬だけ笑った。