Doll 26-Missing
川が轟々と音を立てて流れている。
次第に風も荒れはじめる──
鉄橋の上に一人佇む人影があった。
タスクだ。
彼は服を破り、右目を隠すように巻いた。
「こんな傷、どうってことねェ……それより──Arice・Doll」
風が一気に吹き荒れ、狂風へと変わる。
「タスクか。Alice Glassと“心-イノチ-”、確かに受け取った」
「約束だ。リコリスを──」
「いいだろう。感動の再会の時間だ」
タスクの顔が綻ぶ。
Arice・Dollが指を鳴らすと、空間からリコリスが現れる。
「リコリス、やっと──」
だが、次の瞬間──
「な──ッ!!!」
タスクの目の前でリコリスが粉々に砕け散った。
「は、話が……話が違うじゃねェか!!」
「アレは既に朽ちていた。だから開放してやった」
「オレっちには彼女が……リコリスが必要だったんだ! なのに──」
「五月蝿い。貴様も用無しだ」
再び、Arice・Dollが指を鳴らす。
「ぅぐはぁ──ッ」
タスクの全身から血飛沫が噴き出し、鉄橋から真っ逆さまに落下──
「──失敗作……いや、ガラクタか」
呟くとArice・Dollは消えた。
次第に風が穏やかになっていく──
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